2010年5月29日 (土)

ウエディング・ソング 後編

「中編」からの続き… 

(ちょっとバタバタしててかなり時間が空いちゃったんで、よければ前編中編とも一度読み返してから続きを読んでもらえると嬉しいです。)

 

ただ、

1月に結婚式の招待をもらった時、正直なところ僕は迷った。

その頃は僕自身すごく調子が悪くなってしまっている時期だったし、今の僕が東京までの長旅に耐えられるかどうかという心配があったからだ。

でも、ゆんの晴れ舞台に出席したいという想いはやっぱり強く、僕は1週間考えた末、結局その招待を受けさせてもらうことにした。

 

さらに、実はこの時、2次会で何か歌を歌ってほしいというお願いもされたんだけど、こちらの方はハッキリと断った。

もちろん、大前提として声が出ないというのもあるし、

それ以前に、今回ゆんを含めゆんの周りの「ちゃんとしたミュージシャン」がたくさん招待されている中、そこは僕みたいな「ちゃんとしていないミュージシャン」が歌うべき場じゃないと思ったからである。

 

 

さて、そんなこんなで2月末の結婚式当日。

この頃になると、僕も「2009-2010」の後半部分で書いたようにようやく気持ちも上向き始め、心配していた東京までの長旅もなんとか乗り越えることができた。

そして、無事神前での式も終え、明治記念館で行われる披露宴へ。

会場に着くと、新婦側の座席にはそれぞれ、出席者一人一人に対するゆんからの手紙が添えられてあった。

開宴まではまだ少し時間があったので、僕は着席して、ゆっくりとその僕宛ての手紙を読む。

そこにはとても懐かしいエピソードや嬉しい言葉がたくさん綴られていたんだけど、その中にひとつ、こんな一文が含まれていた。

 

「たかゆき先生は、私に唄っていいよと言ってくれたはじめての人間です。

だから今、こうして唄えているよ。

本当にありがとう。」

 

 

ゆんとはもう随分長い付き合いになるが、まさか彼女がそんな風に思ってくれるなんて想像もしていなかったので、

僕は急に目頭が熱くなり、周りの人にそれを気付かれるのが恥ずかしくて、開宴までずっと下を向いていた…。

 

 

披露宴自体も素晴らしいものだった。

やっぱり、新郎新婦どちらもが「表現者」ということもあり、とてもオリジナリティ溢れる内容だったのだ。

映画監督である新郎さんの仕事仲間が作った2人の紹介ビデオは、とても本格的で素敵な作品だったし、

(披露宴では)余興で出席者の誰かがお祝いの歌を歌うわけじゃなくて、なんとゆん本人がサポートバンドを引き連れて出席者の皆さんに歌を披露してくれた。

ウェディングドレス姿のまま歌うゆんは今までに見たことがないくらいとても綺麗で、全身で、歌うことの幸せや家族・周りの人に対する感謝を表していた。

 

僕はとっても幸せな気分になっていった。

心から東京までやって来て良かったと思った。

そして同時に、僕の中にある感情が生まれる。

「やっぱり僕も彼女にお祝いの歌を歌いたい」

と。

 

もちろん、冒頭でも言ったように、1ヶ月以上前に今日の2次会で歌うという話は断ってるし、今の今までそんなことも忘れていた。

しかも、最近の僕にとっては、歌を歌うという行為は、「声が出ない」=「怖いもの」というイメージすらあった。

それでも、この日この時、僕はゆんに歌を歌ってあげたいと強く思ったのだ。

たぶん、最初の手紙や、彼女が心から楽しんで歌う姿を見て、僕の中で何かが突き動かされたんだと思う。

「ちゃんとしていないミュージシャン」だっていいじゃないか。

ゆんの結婚を祝う気持ちに変わりはない。

それがゆんに伝わればいいんだ。

じゃあ、声が出ないことに関してはどうしよう。

それだって大丈夫。

みなさんにはまだうまく説明できていないかもしれないが、実は、僕の声が出ない症状というのは、その一曲を通してずっとというわけではなく、サビなどの部分で声を張り上げなければいけないところで突然声(=音)が出なくなってしまうというものなのである。
(キーなどの問題ではない。)

まあもちろん実際は、毎回そうはっきり定義付けできるものでもなくて、その時々によって流動的な部分もたくさんあるんだけれど、とにかく誤解を恐れずにすごく大まかに言ってしまうと、僕は「熱唱」することができなくなってしまったというのが少しは分かりやすい表現かもしれない。

つまり、今まで少しでもお金を儲けるためにどんな曲でも「熱唱」するというスタイルが身に染みついてしまってる僕にとって、それは仕事という面においては致命的ともいえるんだけど、

今回は別にお金を儲けようとしてるわけじゃない。

ただ、お祝いの気持ちを「歌」という手段で伝えようというだけなんだ。

だから、何もいつもみたいに無理に声を張り上げて歌わなくても、今は自分の声の出る範囲で気持ちだけはしっかり込めて歌えばいいんだ。

と、

そう思ったのである。

 

歌う曲に関しても同じ。

もちろん僕はこの日のためのオリジナルソングなんて用意してきていないし、突然何を歌うべきかなんてことも分からない。

けど、幸いにも仕事柄僕はそら(楽譜を見ないで)で歌える歌がたくさんあるわけで、その中からなるべく声を張らないで歌えそうなお祝いの曲を今から決めればいい。

要は、僕がゆんに歌を贈りたい、歌いたい、と思った事が一番大事なことなのだ。

「負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じ抜くこと」も大事だけど、やっぱりそれが一番大事なのだ。

と。

 

 

そうだ、ちょうどいい曲があった。

あの曲にしよう。

(大事MANじゃないよ)

 

 

そして2次会。

僕はギターも持ってきていないのでゆんのサポートミュージシャンからギターを借りて、急遽一曲だけ歌わせてもらえることになった。

お祝いうんぬんは抜きにしても、大勢の人前で歌を歌うという行為自体が約1年ぶり。

いくら格好つけた精神論を頭で並べても、やっぱり実際はめちゃくちゃ緊張する。

声を張らないとはいえ、ほんとに最後まで歌い切れるんだろうか。

せっかくの2次会の雰囲気を台無しにしてしまわないだろうか。

ううん、それでもいいんだ。

僕は小さく首を振って、一度だけ深呼吸をした。

そしてスポットライトの中、ゆんのことだけを頭に思い浮かべて、ゆっくりとこの歌を歌った。

 

(携帯からは見られません)

 

「ウエディング・ソング」

作詞:一倉宏  作曲:斉藤和義

 

あぁ 君に贈る ことば探し

眠れなかった

あぁ 思い出より あたらしい日々

美しくあれ

 

ここにいる人々

ここにいない友達も

きっと 君の名前

呼んでるだろう

その胸に 灯すだろう

 

おめでとう それだけ

言えばあとは こみあげる

たとえば あざやかな

夜明けのように

ただ その風のように

 

そのひとを選んだ

人生がいまはじまる

誰も しあわせしか

いらないだろう

それだけを祈るだろう

 

しあわせのこの日に

君はなぜ震えて泣く

世界でいちばんの

笑顔のあとで

世界に愛されながら

 

(一部抜粋)

 

 

 

 

あれから3カ月。

随分と報告が遅れてしまいましたが、実は僕、1ヶ月ほど前から仕事に復帰しています。

そう、この1年間願い続けたあの路上弾き語りとしての仕事です。

もちろん、まだバリバリにというわけではなくて、無理しないように週1、2回のペースでですけど。

そして、この仕事復帰をしようと決めたきっかけというのが、何を隠そうあの結婚式2次会での「ウエディング・ソング」だったんです。

 

僕は変に完璧主義なところがあるから、今までずっと、仕事復帰するということは声が完全に100%元に戻った状態でという強い思い込みがありました。

でも、みなさんご存知なように、僕の声はもう元には戻らないかもしれないということが分かったわけです。

じゃあ、どうしよう。

これからどうしていこうか。

そういうことをしばらく考えていました。

けどね、今回のことで思ったんです。

何もしないよりは、今出来る範囲のことを少しでもやってみるっていう方が結局自信にもつながるし、随分意味があるんじゃないかって。

だってね、

俺あの時、今までで一番いい「ウエディング・ソング」が歌えてんもん!

 

そりゃ、仕事って面で言うと、声が出ないことがどれだけ致命的かってことは僕が一番身に染みて分かってます。

でもまあその辺のことはややこしいので、また次の機会に詳しく書くとして、

とにかく、今回僕がこの「ウエディング・ソング」前編から後編までを書き始めたのは、そのゆんにお礼を言うためだったんです。

 

 

ゆん。

君は僕が歌を歌っていくきっかけを与えたと言ってくれたけど、

僕の方こそ、時を経て君にまた歌を歌い始めるきっかけを与えてもらいました。

本当にありがとう。

君の存在や歌は、いつも周りの人すべてを幸せにします。

結婚おめでとう。

どうか末永くお幸せに。

 

「夕焼けランプ」ホームページ

「夕焼けランプ」MySpace

 

 

人気ブログランキングへ
  ↑↑
ブログランキングに参加しています。
応援クリックしてもらえるとすごく嬉しいです。

|

2010年4月13日 (火)

ウエディング・ソング 中編

「前編」からの続き…

 

それからというもの、僕の大学生活はほんとに楽しいものになっていった。

いい意味でどこか吹っ切れて、徐々に女の子とも気軽にしゃべれるようになっていったし、そのおかげで仲間もたくさん増えた。

その中でもやはり、僕は「ゆん」とは特に気が合って、大学にいる間は自然と彼女のグループと一緒にいる時間が多くなっていった。

僕以外にも、彼女の周りには男女問わずいつも自然と仲間が集まってきたのだ。

 

 

ゆんは、その年、大学入学のために関西に出てきた愛媛出身の女の子。

現役だから、僕より一つ下の18歳で、大学の近くの小さなアパートに下宿していた。

前回の出来事だけを読めば、なんだかいわゆるただの「不思議ちゃん」かと思われるかもしれないが、彼女はそんなもので定義できるような薄っぺらい人ではなかった。

彼女の中には、大きくて独特な世界観があり、天真爛漫なようでも、そこにはしっかりとした芯があった。

個性的な幼い声で話す話の内容は、いつも優しさやユーモアであふれていて周りにいる人達を笑顔にしたし、なにより彼女は頭の回転が早かった。

そして今、僕は思う。

いくらなんでも、明らかに褒めすぎだと…。(笑)

とにかく、

あれからというもの、彼女のそばでいつも刺激を受けていた僕にとって、ゆんはまるで、毎日何が飛び出すか分からない「おもちゃ箱」みたいな存在だったのである。

 

 

そして、すぐに、あの「ドラミちゃん」の謎も解明した。

それは、仲間達みんなで初めてゆんの部屋に遊びに行った時。

僕がトイレを借りようとしてその扉を開けると、確かにそこにいたのだ…。

流しの上でこちらを向いて笑う小さなドラミちゃんの人形が…。

 

…いやいやいや、

だからといって、たったこれだけのことを、なんであんなタイミングで、あんな言い方で言うの?

そう、それがゆんなのである。(笑)

 

 

 

またある日、僕はゆんの意外な一面を発見した。

これも、みんなで初めて行ったカラオケボックスでのこと。

その日、僕はみんなの前で初めて自分の歌声を披露するということで随分緊張していた。

見知らぬ人に向けての無責任な路上弾き語りはもう何年も続けてきたけど、こうやって改まって友達の前で歌を歌うなんてことは初めてだったからだ。

それでも、いざ歌ってみると、みんな僕の見た目とのギャップに驚いたんだろうか、なんだか照れくさいほどに僕の歌を褒めてくれるし、それは僕が少しうぬぼれだしてしまうほどの勢いだった。

あれ?俺ってほんまに歌上手いんちゃう?

けど、そんな僕のわずかな自信も、次に歌ったゆんの歌を聴いて一瞬にしてどこかに吹き飛んでしまう。

失礼な言い方かもしれないが、予想以上に彼女の歌が素晴らしかったからである。

いくら彼女に一目置いているとはいえ、正直言って、僕はまさか彼女にそういう「音楽」的な才能があるとまでは思ってもみなかった。

だって、(それは向こうからしても同じだったのかもしれないけど)普段の彼女から今まで音楽の匂いなんてものは全く感じたことがなかったし、考えてみると僕達はそんな話すらしたことがなかったから。

だから、自分の歌を褒められて浮かれている僕にとって、それはかなり不意を突かれる衝撃的な出来事だったのだ。

彼女が歌ったのは、中谷美紀の「MIND CIRCUS(マインド・サーカス)」。

偶然にも僕の大好きな曲だったんだけど、決してそんなことだけではない。

歌うことでより際立つ個性的でキュートな声。

誰のモノマネでもない彼女独特な歌い方。

技術的に上手いとかどうとかいう単純な話ではなくて、僕にはそれが彼女の魅力あふれるオリジナル曲のようにすら聞こえたのである。

そして今、僕は思う。

今回のこれは、特に褒めすぎてるわけじゃないと…。(笑)

とにかく、

そのくらいゆんの歌は良かった。

 

ただ、「MIND CIRCUS」自体がそこまで有名な曲というわけじゃなかったからか、周りのみんなの反応は僕の時に比べてかなり薄く、僕にはそれが不思議で、また少しもどかしくもあった。

え、なんでみんな今の歌の凄さが分からんの?

今のんに比べたら、俺のなんてただのまやかしやん!

 

とにかく、感動した僕は、すぐに歌い終わったゆんの横に席を移し、興奮気味に彼女に話しかけた。

 

「わー、わー!ゆんちゃん!めっちゃ歌すごいやん!

ゆんちゃんって、なんか今まで音楽とかやっとったん?」

 

「えっとねー、特に音楽はやってないけど、おウチではちっちゃい頃からよくピアノを弾いて遊んでたよ。」

 

「そっかー。ゆんちゃんって、絶対音楽の才能あるねんで。

なんかやった方がいいかもよ。」

 

「わー、ありがとー。そんなに褒められたん、初めてかも。」

 

 

さて、

ゆんの「おもちゃ箱」の中から新たに「音楽」というものを発見したその日から、

共通項のできた僕達はますます仲が良くなっていった。

そして、この頃からなぜか仲間内の中でも音楽を使った遊びが始まり、

僕達は数人でなんちゃってバンドなんかを組んでみたり、なんちゃってオリジナルソングを作って、僕のなんちゃって実家でなんちゃって多重録音をして、なんちゃってデモテープをなんちゃって作ったりした。なんちゃって。

時には、僕とゆんの2人だけで歌を作ることもあった。

 

こういう遊びっていうのは、いくら遊びとはいえ、今までずっと一人に近い状態で弾き語りを続けてきた僕にとって(コウヘイ君は例外)、「これぞ求めていた青春だ」というぐらい刺激的で楽しいものだったし、

地方の愛媛から出てきたばかりで、まだ自分の可能性に気付いていないゆんにとっても、それは同じことが言えたんではないだろうか。

 

 

 

それから2年が経ち、僕が大学を中退してからも、二人の友人関係は続いた。

さらに、この頃になるとゆんは、自分の部屋でおもちゃのキーボードを使って一人で夜な夜なオリジナルソングを作り出すほどになっていて、

曲が出来上がるとそれをテープに録音して、よく僕にも聞かせてくれた。

その頃の彼女にとっては、環境的にもまだ、音楽の面で頼れる人間は僕ぐらいしかいなかったのかもしれない。

ただ、そのオリジナルソングというのはどれも、僕がどうこう言うのもおこがましく感じてしまうほど本当に素晴らしいものばかりで、

もちろんそれはただ部屋で軽く録音しただけのデモテープなので、全くの完成系というわけではなかったんだけど、それでも、曲自体は決してもう以前のお遊びソングとは比べることが出来ないぐらいにクオリティの高いものだった。

彼女は、このたった数年の間で、自分の中に溢れる独特な世界観や魅力を、しっかりとオリジナルソングというものの中に詰め込むことが出来るようになっていたのである。

やっぱり、ゆんの中には「音楽」がいっぱい眠っていたんだ!

やっぱり、ゆんは凄い人だったんだ!

僕は、自分の直感が当たっていたことに満足する気持ちと同時に、ちゃんとしたオリジナルソングなど全く作れない自分の才能の無さを恥ずかしくも思い、ますますゆんに対し一目も二目も置くようになった。

 

 

そして、本格的に曲作りを始め、自分の中に眠っていた「音楽」や可能性にどんどん目覚め始めた彼女は、

ごく自然な流れとして、しだいに不特定多数の人々にも自分の音楽を聴いてほしいと願うようになる。

それには僕も大賛成だった。

だって、そうじゃないと、曲を作っては僕や数人に聞かせるだけのこんな状況は、あまりにももったいなすぎるじゃないか。

 

そこで僕達は、手始めに、ピアノが置いてある小さなバーや飲食店など、ゆんが定期的にオリジナルソングを歌えるような場所がないか一緒に探すことにしたんだけど、

そうは言ってもやはり、この時点ではまだ彼女は人前で歌を歌ったことがほとんどないような状態だったので、店の事情や、ひとりぼっちで歌わなければいけないという彼女自身の繊細な気持ちを含め、なかなかそれもうまくいかなかった。

 

そんな中、彼女の中に

「じゃあ、一人じゃなくてバンドを組んで音楽活動をする」

という新しい選択肢が生まれる。

僕は、そちらも大賛成だった。

ただ、

この頃まだ自分にも目指す音楽があった僕としては、だからといって彼女のバンドメンバーとして一緒に活動するという決断をするわけにもいかず、

ただただ、これからも彼女を応援してあげようと思うことぐらいしかできなかったんだけど…。

 

そして、ある日。

ゆんは、楽器屋さんに張ってあったというある紙切れを持って僕のもとにやって来る。

そこには、

「ポップスバンド、女性ボーカル募集!」

という文字、そしてギターとベースの男子メンバー2人の紹介と携帯番号が書かれてあった。

 

「いいやん、ゆん!

これこそ、求めてたもんやんか!」

 

「うん。」

 

「じゃあ、さっそく今から連絡してみたら?

善は急げやで!」

 

しかし、ゆんは、何故か黙って首を横に振る。

 

「え?なんで?

メンバーの歳も近そうやし、音楽の趣味も合いそうやし、ちょうどええやん。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・。

たかゆき氏(当時の僕のあだ名)が電話して。」

 

「…は!?」

 

 

なんでも、

こんな経験は初めてなので、自分で電話するのはどうしても緊張するらしく、代わりに僕に電話してほしいというのだ。

なるほど、それでわざわざ僕の家を訪ねてきたのか。

まあ、彼女を応援すると決めていたから、別にそれぐらいの事は構わないんだけど、

それで困惑するのはあちら側の方じゃないだろうか…。(笑)

 

さっそく僕が、そのメンバーの一人に電話をかける。

 

「あ、もしもし。

えっと、楽器屋のバンドボーカル募集の紙を見てお電話させてもらったんですけど、まだ募集ってされてますか?」
   ↑
完全におっさん声。

 

「…はい?

あの…、えっと…、

まだ募集してるにはしてるんですが、申し訳ないですけど、その募集は男性ではなくて女性ボーカルの募集なんですよ…。」
   ↑
完全にヤバイ人が電話をかけてきたと思ってる。

 

「はい、分かってます!(キッパリ)

ボーカルをしたいのは、僕じゃなくて、友達なんです!」

 

 

とまあ、なんとも噛み合わない会話がしばらく続いて、ようやく用件は伝わったんだけど、

最後には、じゃあ一度スタジオに入ってセッション形式でボーカルを聞かせてほしい、ということになった。

 

「よし、ゆん。

当日は頑張ってな!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・。

たかゆき氏もついてきて。」

 

 

…わしゃ、保護者か!(笑)

 

けど、仕方がない。

今まで外に向けた音楽活動などしたことのない彼女にとっては、いくら才能があるといっても、こういうことすべてが初めての経験であり、

それはまるで、ずっと自宅の小さなプールで泳いでいた子供が、初めて大きな海に出たようなものなのだ。

それも理解してあげないと。

 

 

とにかくまあ、そんなわけで、

いかにも怪しい部外者(僕)が見守る奇妙な状況の中、なんとか無事にスタジオセッションも終わり、めでたくゆんのバンド加入が決まったんだけど、

そこからの彼女はやっぱり凄かった。

目の前の大海原を、ひるむことなく自由に泳ぎ始めたのである。

 

 

ゆんの命名で、「オレンジ☆プランクトン」と名付けられたそのバンドは、ドラムも迎え入れ1999年5月に大阪で活動を開始。

半年ほどして行われた初ライブでは、小規模ながらもベテランバンドを含むコンテスト形式で行われ、いきなり優勝。

ほどなく、メンバーにもゆんの才能は十分に認められ、大半の曲をゆんが作詞作曲するようになる。

順調にライブ活動を続け、2001年8月には念願のCDデビュー。

同年、有線大賞インディーズ部門の最優秀新人賞に選ばれる。

翌年には東京進出。

その後、多少のメンバーの入れ替わりはあったものの、2005年までにアルバム4枚、シングル3枚をリリース。

その間、テレビ・ラジオ出演、CMソングなど、メディアにも多数取り上げられるものの、2005年いっぱいで、惜しまれつつ「オレンジ☆プランクトン」は解散。

 

しかし、2006年からは、ゆんは自身のソロプロジェクト「夕焼けランプ」として活動再開。

「夕焼けランプ」としてもますます活躍の場を広げ、映画やドラマ主題歌、CMソングなどに多数の楽曲を提供。

現在も精力的に活動中で、CDはアルバム1枚、シングル1枚をリリースしている。

 

「夕焼けランプ」ホームページ →こちら

「夕焼けランプ」MySpace →こちら

 

夕焼けバラッド Music 夕焼けバラッド

アーティスト:夕焼けランプ
販売元:クライムミュージックエンターテインメント
発売日:2007/08/29
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 

はっきり言って、お世辞抜きにこの「夕焼けバラッド」は名盤だ。

 

ちなみに、最近の僕のお気に入りを、1曲だけ期間限定の特別デモテープ仕様でみなさんにお聞かせします。

いや、お聞かせしますとか偉そうなことは言いません。

どうかみなさま、最後までお聞きください。(土下座&上目づかい)

「夕焼けバラッド」収録の「手紙の唄」という曲です。

(ヘッドホン推奨)
(うまく表示されない方は、なるべく最新の
Flash Playerをインストールしてください。)
(携帯からは見られませんし、聞けません。)
(ちなみに僕、今回このカセット型プレーヤーを作るのに、計10時間以上かかってます。あはは…。)

 

 

 

もちろん、「夕焼けランプ」は、こういった系統の曲ばかりではないんですけど、この曲はどうしても今の僕の気分にピッタリだったんです。

もし、今回少しでもゆんに興味が沸いたという方がいらしゃったら、是非アルバム「夕焼けバラッド」をお買い求めください。

きっと、あなたの大事な一枚になってくれるはずです。

 

お値段も、たったの2,100円。

なんと、我が国の国家予算の450億分の1のお手頃価格です。

これなら、お財布にも日本にも優しいですね。

 

はい!

セールスマンタイム終了!

 

 

とにかく、

今年の2月にそのゆんが映画監督さんとめでたく結婚することになり、僕は東京での結婚式に招待されたのである。

 

 

つづく…。

 

(相変わらず、なんて長い前ふり…。笑)

 

人気ブログランキングへ
  ↑↑
ブログランキングに参加しています。
応援クリックしてもらえるとすごく嬉しいです。

|

2010年3月25日 (木)

ウエディング・ソング 前編

前回で書き切れなかった話を少し。

 

2月末、僕は東京に行った。

大学時代のある友人の結婚式に出席するためだ。

 

 

14年前。

以前にも何度か話したが、中学・高校とずっと男子校の中で過ごしてきた僕は、女性という生き物とはほとんどふれ合ったことのない超ウブな若者だった。(唯一の例外→「初恋、のようなもの」

そんな僕が、一浪して大学に入学した時、まず初めに心配したのが、やはりその「女性」の存在。

ちゃんと目を見てしゃべれるやろか…。

気持ち悪がられへんやろか…。

勉強のことなんかよりも、ほんとにそんなことばかり心配していた19歳だった。

 

しかし、幸いなことに、僕が最初に所属したゼミは、想像以上に和気あいあいといった雰囲気で、女性陣も皆フランクな子たちばっかりだった。

まあ、ここで「フランク」なんてカッコつけたことを言っても、実際はもちろん僕が彼女たちと話をしたりすることが出来るはずもなく、それは客観的に他の子たちとしゃべっているのを見てとかいうレベルの話だったんだけども…。(苦笑)

それでも、その「和気あいあい」のおかげで、男友達はすぐにたくさんできた。

まあ、よしとしよう。

少なくとも、これで大学生活を一人で孤独に過ごさなければいけないという最悪の事態だけは避けられたんだから。

 

 

そんなある日。

僕は男友達の一人と一緒に、学生食堂である論文を書いていた。

その論文はキリスト教に関する論文だったんだけど、僕の大学はキリスト系の学校で、この論文を提出しないと必須単位がもらえないという重要な論文だった。

ただ、この頃の僕は、母親の強い要望で大学に入学したはいいものの、勉強や卒業には本当に興味がないダメ学生だったので、こういう必須の論文でさえもただただ疎ましく思っていた。

そこで僕は、何を血迷ったのか、その男友達を笑わすためだけに、その論文用紙に僕の中の「ドラえもん論」を大真面目に書きつづりはじめた。

本気でそれを提出してやろうと思ったのである。

キリスト教の論文なのに、ドラえもん論。

今考えると、シュールを通り越して一体何が面白いのかサッパリ分からないけど、それでも出来あがったものを読んだ友達は大いに笑ってくれた。

僕は満足だった。

大学をなめるなと言われてしまいそうだけど、この時僕は少しでも自分という人間を友達に知って欲しかったのかもしれない。

とにかく、気を良くした僕は、しばらくその友達と2人でケタケタ笑い合っていたんだけど、

その時、偶然にもその食堂に居合わせた同じゼミの女の子2人組が、僕達の笑い声につられてこちらにやって来てしまう。

僕の中に、一瞬にして緊張が走った。

もちろん、ただ女の子がやって来たということもあるが、それ以上に、その内の一人が僕にとってゼミの中で特に気になっていた美人の女の子だったからである。

 

「2人で何笑ってんの?」

まず、その美人な子が話しかけてきた。

 

「え?いや、あの…。」

 

「ちゃうねん。あんな、たかゆきがキリ教の論文にドラえもんの話書きよってん!」

代わりに友達が答える横で、僕はただ顔を真っ赤にしてうつむくしかなかった。

 

「へえー、すごい!たかゆきくん、これほんまに提出するの?」

 

「…あ、う、うん、まあね。」

僕はもう耳の先まで真っ赤にして、目も合わせずに答える。

 

「わー、たかゆき君っておもしろいなあー。」

 

「そ、そんなことないよ…。」

 

 

とにかくまあ、そんな不毛な会話がしばらく続いた後、僕達男2人は席を立ったんだけど、

食堂を出てしばらくしたところで、さっきのもう片方の女の子がなぜか背後から走って追いかけてきた。

彼女は、さっきは一言もしゃべってなかったけど、いつもはまるで子供みたいな幼い声で話す、とても背の小さな女の子。

顔もすごく童顔で、特に今日なんかはオーバーオールを着ているもんだから、はたから見たら中学生ぐらいに見えてもおかしくない風貌である。

その彼女が追いかけてくる。

何だろう。

何か言い忘れたことでもあったのかなあ。

 

そして、彼女は追いつくなり、僕の目を見つめて一言。 

 

「ドラえもんが好きですか?

わたしの家にはドラミちゃんがいます。」

 

 

ん!?

…は?

 

 

あまりにも予想外の言葉に、僕は一瞬言葉を失ってしまった。

しかも彼女は、それだけ言うと、僕の返事を聞くまでもなくクルリと方向転換し、あっという間にもといた場所に走り去っていってしまったのである。

 

 

!?

…え、えー??

 

 

僕の頭の中は、もう「?」で埋め尽くされた。

なんだったんだ、今のは…?

ドラミちゃんが家にいます?

しかも、言い逃げ?

…さっぱり、わけが分からない。

 

 

ただ、

わけが分からないと同時に、彼女が僕の中に強烈なイメージを残したことだけは確かで、

結局その後一日は、彼女の存在が頭からこびりついて離れなくなってしまった…。

 

しかも、時間が経つと、そのイメージにはなんだか奇妙な清々(すがすが)しささえも伴い始めて、

「ああ、世の中っていうのは、まだまだ俺の知らない人達や価値観であふれてるんやなあ。

それなのに、俺は今までなんて狭い世界に住んでたんやろう。

こりゃあ、一つの価値観に凝り固まったり、いちいち女の子に恐縮してる場合じゃないなあ。

もったいない。

そうや、俺達はもっと自由なんや!

…わー、大学生活って、予想以上に楽しいものなのかも。」

などと、

そこまで大げさなものに膨らんでいった。

 

 

読んでる方にうまく伝わっているかどうかが不安だが、

とにかく、彼女のあの行動は、いくら目的や意味が分からなくても、僕にとっては本当に衝撃的な出来事で、

今思い返してみると、あれこそが僕の大学生活の始まりを告げてくれた大きな鐘の音だったのである。

 

 

そしてこれが、

先月めでたく結婚した「ゆん」と、僕とのファーストコンタクトだった…。

 

 

つづく…。

 

 

すみません!

冒頭で、「書き切れなかった話を少し」なんてイキがったことを言ってましたが、結局いつも通り長くなっちゃいそうなんで(笑)、次回に続きます!

 

人気ブログランキングへ
  ↑↑
ブログランキングに参加しています。
応援クリックしてもらえるとすごく嬉しいです。

|