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2010年12月 1日 (水)

太陽にほえ続けろ!

今日も、とても昔のお話。

 

ある晩、僕の前で、えらくニコニコしたスーツ姿のおじさんが立ち止った。

僕は、歌っていた歌を中断させて、すぐに営業モードに入る。

 

「えっと、何かお好きな歌があったら言ってくださいね。

もしよかったら、『リクエスト表』っていうのもありますんで。」

 

「あっ、そうやったな。

じゃあ、何聞かせてもらおうかな。」

 

おじさんは、ニコニコしたまま僕の横に座り、嬉しそうに「リクエスト表」を眺め、そして一つの曲を僕にリクエストした。

そして、

僕はその曲を歌い、おじさんは拍手し、お金をギターケースに入れてくれる。

ここまでは、僕の仕事のいつもの光景だ。

でも、ここからがいつもと少し違った。

 

おじさんが帰らないのである。

いまだに黙ってニコニコ僕を見つめたまま。

いや、もはや「ニヤニヤ」という表現の方が近いかもしれない。

 

ん?

なんだ、このおじさんは?

まだ、聞きたい曲があるんかな?

 

「えっと、もし他にもリクエストがあったら・・・」

 

「お前、ほんまに俺が分からんのか?」

 

…え!?

なに?

どういうこと?

もしかして、常連さん?

 

 

正直、ありがたいことに僕には昔から数え切れないほどの常連さんがいるので、こういうことが度々起こる。

向こうが何度も歌を聞いて自分は常連だと思ってくださっていても、僕がその人を全く覚えていないというパターン…。

 

そして、このおじさんも、失礼ながら例にもれず、

いくら思い出そうとしても、僕の記憶には残っていなかった。

 

しかし、このままじゃ、相手に不愉快な思いをさせてしまう。

よし、こういう時には、いつもの決まり文句だ。

僕はこういう場面ではいつも、とりあえずこのセリフで相手の反応をうかがい、そこからまた、なんとか話をそらしていくのだ。(笑)

 

「いや、えーっと、

お顔だけはなんとなく覚えているんですけど…。」

 

でも、このニコニコおじさんはなかなかの強者で、

なぜだかすぐに僕の嘘を見破った。

 

「そっか、お前、俺の顔ほんまに忘れてもうたんやな…。」

 

「え、いや、あの、そんなことはないいんですけど…。えっとー。」

 

そんな僕の反応に、

少し切ない顔をみせる、ニコニコおじさん…。
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(書き方がなんかややこしい!)

 

「まあでも、そうかもなあ。

あの頃とは、格好が全然ちゃうもんな。」

 

…ん?格好?

 

「俺や、俺。

2年前のお巡りさんや。」

 

 

…!!!!!!

 

忘れるわけがなかった。

僕はもう一度、ニコニコおじさんの顔をじっと見て、

そして、全てを思い出した。

 

 

 

さかのぼること2年ほど前。

僕がこの仕事を始めてまだそんなに経っていない頃。

一人のとても優しいお巡りさんがいた。

 

その人は、

なぜそこまで僕に気をかけてくれるのかは分からなかったけど、

パトロール中、とにかく、僕の前を通るたびに、

「大丈夫か?トラブル起きてないか?」

とか、

「どや、今日は儲かったか?」

とか、

「今日は寒いから、カゼひくなよ。」

などと声をかけてくれたのである。

 

僕は、今までの経験上、ストリートミュージシャンにとって、警察というのは天敵だという強い思い込みがあったので、

このお巡りさんだけが起こす独特な行動が、もちろん嬉しくもあったんだけど、同時に、すごく不思議な感じもしていた。

ハッキリ言ってしまうと、

他のお巡りさんとの兼ね合いもあって、僕は、彼にどう対応していいのかが分からなかったのである。

 

「なんか大きなトラブルが無い限りはな、俺はお前を絶対に止めたりせんからな。」

いつもそう言ってくれる彼は、

時にはなんと、僕がトイレに行っている間、弾き語り道具を見守ってさえいてくれるようなほんとに変わったお巡りさんで、

「たまにはお前の歌ゆっくりと聴きたいねんけどな、俺も仕事中やからな。」

などと笑っていることもあった。

 

 

ただ、このお巡りさんが僕の恩人であることに間違いはなく、

彼がいたからこそ、僕はこの場所でずっと歌っていってもいいんだという自信がついたんだし、

実際に、1年ほどで彼がいなくなってしまった後も、その後ずっと、この場所で警察との大きなもめごとは起きなかった。
(結局、「ノーレイン ノーレインボーな話」のあのおっさんが現れるまでずっと)

もしかしたら、彼が、他のお巡りさんに、伝達のようなものをしていてくれたのかもしれない。

 

 

 

そしてあれから2年。

今僕の目の前にいる、このスーツ姿のおじさんは、

当時は制服姿のイメージしかなかったので、初めこそ全く気付かなかったが、

確かに、あの時のお巡りさんなのだ!

 

「わー!わー!わー!お巡りさん!!

めっちゃお久しぶりです!!

あの頃は、ほんとにお世話になりました!!」

 

「ハハハ、やっと思い出してくれたか。

俺もあれから頑張って刑事になることができてなあ。

今日は休みで、○○に飲みに来たんや。

そんで、ここに来たら、まだお前が歌ってたから嬉しなってなあ。

あの頃は俺も、いつかお前の歌をお金払ってゆっくり聞きたいもんやと思ってたから、

今日はやっと夢が実現したわ。」

 

そう言って、

ニコニコ刑事は、大きな声で笑ったのである。

 

 

ね?

世の中捨てたもんじゃないでしょ。

 

 

 

 

そしてね、実は今回の話こそが、

4年前に「太陽にほえろ!」っていう記事で書いた、残りのもう1組のお巡りさんの話だったんです。

 

よっしゃ、

これでまたこのブログの義務をひとつ果たして、

なおかつ思い出もひとつ消化できた!

うれしー!

ニコニコ!

 

 

P.S.

えっと、2週間ほど前に、ここで、このブログを紹介してくれた方々にお礼を言わせてもらいましたが、

なんと、あれからもまた、何名かの方々が、ご自身のサイトでこのブログを紹介してくださったようです。

もう、そのご厚意にも、その内容にも、

僕、幸せすぎて泣けてきちゃいます。

 

ブログでは、

「追憶の花の上で」のKeyさん、

「eeeballoon的日記」のちゃまんさ★さん、

「★まじきん日記へめんそ~れ★」のまじきんさん、

「力を抜いて (ギター修行日記・育休編)」のtakuyaさん、

「子育て観察と晩御飯と日々の生活」のakira-turibakaさん。

写真家の天野裕氏さん→こちら

 

ミクシィ他では、

サン・ミケーレ宮さん。(数年前にも1度紹介してくださってるので、なんと2回目!)

みわいど。さん。(みわいど。さんも、ツイッターに続き、サイト内でも紹介してくださりました。)

 

他にも、まだ口コミなどで紹介してくださったという方々。

 

もう、みんな優しすぎます!

ほんと、世の中捨てたもんじゃない!

うれしー!

ニコニコ!

 

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