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2010年11月21日 (日)

「S」 1

今日から書き始めるS助さんとのお話について、

みなさんに、初めにどうしても言っておきたいことがあります。

 

えーっとね、なんて説明したらいいんでしょうか、

あまり期待してもらっても申し訳ないので、先に言っちゃいますが、

今回の話っていうのは、あまり楽しい内容のお話ではない上に、僕自身の中では、もうとことん消化しつくした過去の話になってしまっています。

なので、

この話を読んで、僕や他の誰かを非難したり、逆に褒めたり、アドバイスをしたり、

っていうことだけは、どうかしないでほしいんです。

 

でも、もちろん、

僕自身は、自分の人生の記録として、覚えていることは、書ける範囲でなるべく正直に全て書いていこうと思っているので、

あくまでもドキュメンタリーのようなものとして、それがみなさんに少しでも興味のある話になればいいなと思っています。

 

では、

それだけは分かってもらったところで、さっそく始めますね。

わー、ものすごく久しぶりにこの話書くから、なんかめっちゃ緊張するー!

 

あ!すみません!

後もうひとつだけ言うの忘れてた!

えっとね、今回の話は、S助さんの話でありながら、

実は、右のカテゴリー「ノーレイン ノーレインボーのその後」の続きでもあるので、

今日は、まずその続きから始めます。

(結局1回目から、ものすごく暗くて、とんでもなく長いです。苦笑)

 

 

「コンビニ」からの続き…

 

ほんとに僕は、何かの精神的な病気なんだろうか…。

 

そう考えると、やっぱり苦しくて仕方なかったけど、

その日は友達が朝まで一緒に居てくれたおかげで、結局その後、さっきのような発作が起こることはなかった。

 

 

そして、翌朝。

僕は、友達を送ったその足で、昨夜救急隊員に言われた通り、近所の「精神科」に向かった。

もちろん、怯えながら。

なにせ、人生初の精神科である。

そう簡単に受け入れられるものじゃない。

まさか、人生のなかで、自分がそういうところにお世話になる時が来るなんて…。

でも、このまま放っておいて、またあんな発作が起きることを考えると、僕には選択肢なんて無かった。

 

僕は、勇気を振り絞ってその精神科に足を踏み入れた。

 

ただ、この時心のどこかでは、

「ちゃんと精神科で診てもらいさえすれば、きっと優しい先生が僕の話をゆっくり聞いてくれて、発作の原因を突き止めてくれる。

そして、すぐに問題を解決してくれる。」

と、やみくもに信じている部分もあって、

また実際に、そういう考えにすがっている自分もいた。

 

 

でも、現実は全然違った…。

まず朝一だというのに、待合室は混みに混んでいて、1時間ほど待った末にようやく僕を診てくれた先生は、

忙しさからか、僕の話をゆっくりと聞こうなんて姿勢は全くなく、僕が大まかな概要を説明しているだけでも、2,30秒ですぐにその話を断ち切って、

「じゃあ、お薬を出しておくので、しばらくそれを飲んで、また来週にでも来てください。」

とだけ告げたのである。

 

え?

僕は一瞬、耳を疑った。

…もしかして、これで診察が終わりだっていうんだろうか?

 

勇気を振り絞ってやって来たのに…。

僕は、昨夜自分の身に起こった出来事の意味が分からず、本当に怯えているのに…。

 

 

信じられない僕は、少しでも食い下がるために、自分から質問してみた。

 

「え、えっと、お薬っていうのは、安定剤ってことでしょうか…?」

「そうです。」

「えっと、じゃあ、やっぱり、僕には精神的な問題があるってことなんでしょうか…?」

「おそらく、そういうことになりますね。では、お薬をちゃんと飲んでくださいね。」

 

僕はもうそれ以上何も言えなくなって、診察室を出て受付で薬だけ受け取ると、逃げるように病院を飛び出した。

朝の光は眩しい。

 

もう二度と精神科なんかに行くもんか!

あんなので、俺の何が分かるんや!

こんな薬も飲むもんか!

 

 

部屋に戻った頃には、

僕はもうかなりぐったりしてしまっていた。

でも、それと反比例するように、頭の中だけは相変わらず活発に動いていて、さっきの病院でのやり取りがずっと反復されている。

 

「やっぱり、僕には精神的な問題があるってことなんでしょうか…?」

「おそらく、そういうことになりますね。」

 

 

さあ、これから僕は一体どうしていったらいいんだろう。

 

 

20分後。

結局、昨晩から一睡もしていなくて憔悴しきっているのに、いまだに眠ることもできず、さっきから同じ事ばっかりを考えている僕。

でも、そんな時、

突然昨日と同じような発作がまた始まってしまう。

 

…ああ、もう嫌や。

 

 

しかし、

今回の発作も、昨晩と同様、容赦無く僕を飲み込んでいく。

 

 

その時、

あぶら汗をにじませ、もだえ苦しむ僕の目にたまたま飛び込んできたのは、さっき病院でもらった安定剤の袋だった…。

・・・・・・・・・・・。

 

 

みなさんがどうなのかは分からない。

でも、この頃の僕にとっては、安定剤などの向精神薬というのは、精神科と同じく、未知で怖いものというイメージしかなかった。

しかも、この薬の説明書きには、

「脳に直接作用して、不安を和らげたり、気持ちを落ち着かせる」

などと書いてある。

脳に直接作用…。

バカバカしく思うかもしれないが、今のパニック状態の僕には、その言葉のイメージが本当に恐ろしいものに感じたのである。

 

どうしよう、怖すぎる…。

でも、このままじゃまた、どうにかなってしまいそうや…。

でも、やっぱり、恐ろしくて飲めない…。

でも、気が狂って死んでしまいそうや…。

でも、飲めない…。

 

 

極限の緊張状態の中、自問自答を繰り返し、

結局、僕がその安定剤を飲み込んだのは、過呼吸で体全体が完全に硬直してしまう寸前のことだった…。

 

 

…ただ、

事態はそれだけでは終わらなかった。

 

今度は、一瞬のうちに安定剤が効いてきて、

それが僕を支配し始めたのである。

 

なんだか、これだけを聞くと、良いことのように聞こえるかもしれない。

でも、

生まれて初めて飲んだ安定剤の効き方っていうのは、僕の想像していたものとは全く違い、ものすごく恐ろしいものだったのだ。

 

絶対的な「安定」という名のもとに、

急激に体内がクールダウンして、全ての内臓が働きをピタッと止めてしまう感じというか…。

人間としての機能が停止して、「死」に向かっていくイメージというか…。

 

もちろん、今冷静になって考えれば、安定剤を飲んで死んでしまうなんてことは絶対にありえないんだけど、

うまく伝わるかどうか、

とにかく、その時の僕にとっては、それは本当にハッキリと「死」に向かっていくような恐ろしい体験だったのである。

そして、しばらくすると、

あまりにもの苦しみに、僕はうつ伏せ状態で、床に倒れてしまった。

 

一体なんなんや、この薬は…。

このままじゃ死んじゃうやんか…。

恐ろしい、恐ろしい…。

ああ、もう限界や…。

誰か、助けて…。

 

 

僕は床を這いずりながら、携帯電話を探し、震える手でなんとか「119」を押した。

 

「はい、119番です。火事ですか?救急ですか?」

「救急です…。」

「どうされましたか?」

「え、えっと、こ、怖いんで、まず先に住所を言ってもいいですか…。○○区△△□□…。」

「はい、今からそちらに救急車を向かわせますからね。で、どうされました?大丈夫ですか?」

「えっと、さっき安定剤を飲んだら、きゅ、急に体がおかしくなって…」
     
     ・
     ・
     ・
     ・

 

 

ただ、

119番に電話したことで脳が安心したとでもいうのだろうか、

それから救急車が到着するまでの間、

僕のさっきまでの症状は何故だか少しずつ改善していき、

5分後、たまたま鍵が開けっぱなしだったドアから、救急隊員が入ってきた頃には、

僕はもう、ソファーに座れるぐらいまでに回復していて、かなり冷静さも取り戻していた。

 

2日も連続で救急車を呼んでしまった…。

 

 

「大丈夫ですか?」

部屋に入ってきた救急隊員2人は、昨夜とは違う2人だった。

 

「はい、すみません。今は、大分良くなってきました。」

 

「一体、何があったんですか?」

 

僕は、昨夜起こったことや、昨日も救急車を呼んだこと、そしてついさっき起こったことなどを、今一度詳しく隊員に伝えた。

 

「…それで、さっき安定剤を飲んで出た症状っていうのは、薬を飲んでどのくらい経ってからのものでしたか?」

 

「えっと、薬を飲んでからすぐです。」

 

「じゃあ、それは安定剤のせいではないですね。飲み薬っていうのは、服用してから少なくとも15分ぐらい経たないと効いてはこないですから…。」

 

 

・・・・!!!

 

笑いごとではなかった。

そうだ。

確かに、よく考えてみると、薬があんなに早く効くわけがないじゃないか!

じゃあ、安定剤を飲んでからのあの地獄のような苦しみは、全部僕が勝手に作り上げた「幻覚」みたいなものだったっていうのか…!?

確かに、救急隊員が到着してからも、僕はどんどん冷静さを取り戻す一方だ。

 

僕はもう、どうしようもない情けなさやら悲しさで、

自分というものが全く分からなくなっていった…。

 

 

「えっと、じゃあ、あれは幻覚だったっていうことですかね?」

 

「はい、そうですね。その可能性が高いと思います。まあでも、万が一ということもありますから、一応救急車に乗って、内科の方にでも行ってもらいましょうかね。」

 

「いや、大丈夫です。自分でも、もうよく分かりましたから。今は体も大丈夫になりましたし、救急車に乗って内科にだなんて、申し訳なさすぎます…。」

 

「でも、万が一ということもありますので、どうぞ乗ってください。」

 

 

 

そして、救急車の中、

今頃になって本当に効いてきた安定剤の効果っていうのは、とても穏やかで優しくて、

僕は冷静になった頭の中で、ようやく自分は精神的な病気なんだということをハッキリと認識し、理解した。

 

 

 

この後、家からいくらか離れた内科で降ろされた僕は、

ずっと、「申し訳ないです。」「申し訳ないです。」の繰り返しで、

とにかく、先生や看護婦さんに頭を下げてばかりいた。

もちろん、内科で何も見つかるわけもない。

 

病院を出ると、

僕は自分の現実に、もうぐしゃぐしゃになるまで泣きながら、

家までとぼとぼと歩いて帰った。

 

 

次の日から、僕は真面目に「精神科」探しを始めた。

3,4件回った結果、何故だかやっぱりどこにも良い先生と思える人はいなかったけど、

最後にはようやくひとつの病院に決めた。

別にここも良い先生だと思ったわけではないんだけど、

僕はもう早く治療に専念することを選んだのだ。

(最高に優しくて、僕の大好きな恩人「ひよこ先生」に出会うのは、これから何年も後のこと)

 

そして、その病院で僕は、

「パニック障害(不安神経症)」

という病名を告知され、投薬治療をスタートさせた。

 

 

でも、この病気は思った以上に手ごわかった。

いくら病院に通い、毎日薬を飲んでも、

今度は、外出先や、お店、電車内などでも、僕はパニック発作を多発してしまい、

その都度苦しむことになったのである。

 

しかも、正月休みが終わり、仕事を再開させると、

僕は、歌っている最中にも、たまにパニック発作を起こすようになってしまった。

 

もちろん、すぐに安定剤を飲めばいいんだろうけど、

やっぱりいい歌を歌うには、常にテンションを上げておかなければいけないという商売なので、

仕事中に安定剤を飲むっていうのはどうしてもはばかられて、

そんな時は、僕は歌を聴いてくれているお客さんに気付かれないように、死にもの狂いで発作に耐え切るということを繰り返さざるを得なかった。

 

 

しかしそんな中でも、

一番僕を悩ませていたのは、やはり、

世界一周のこと。

せっかく見つけたばかりの大きな大きな夢を前に、なんでこんなことになってしまったんだろう。

この病気が続けば、ほんとに1年後に僕は世界一周に旅立てるんだろうか?

毎日、そんなことばかり考えていた。

 

 

 

実はそんな時期のことなのである。

僕が、島田S助さんに初めて出会ったのは…。

「島田S助さんとの出会い」全4話を参照)

 

 

「S」2へ続く…。

 

 

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