青春狂騒曲
この「始まりの物語」、随分連載期間が長くなっちゃってるので、一旦ここで話を整理してみましょう。
まず、今僕は20歳、大学2回生。
けど、無難に就職する気のない僕は、大学に在籍していることに全く意義を感じておらず、これからどうしようかなあっと、日々もんもんとしているわけです。
そんな夏休み。
福岡に住む3つ年下の親友ノリヒサが、2週間後にイギリス留学が決まっていて、それまでの間、せっかくだから僕に福岡に遊びに来ないかと誘ってきます。
そもそも大学生の夏休みというのは、丸々2ヶ月と異様に長いので、
じゃあ今年の夏休みは、初めの2週間は福岡で羽を伸ばし、残りの1ヶ月半はお金もないだろうから大阪に戻ってバイトにでも明け暮れようということに決まるわけです。
そして僕は、2週間の観光気分で、ここ福岡にやって来た、と。
はいみなさん、ここまではいいですね?(←先生気分。笑)
しかし、初日の夜から、僕は、まるで運命に導かれるように、外山恒一さんという人物に出会ってしまいます。
この人はなんと、ほぼ路上弾き語りの儲けだけで生活しているというのです!
最初は半信半疑ながらも、僕はこの人に強い興味を持ちます。
そして、自ら教えを乞い、さっそくこの夜、僕もこのお金儲け弾き語りというものを試してみます。
すると、ほんとに弾き語りでお金が稼げるではないですか!!
今までただの趣味程度に弾き語りを続けていた僕にとって、これはとんでもなくショッキングな事実でした。
しかも、少しコツをつかんだ僕は、2日目には、普通のバイトでは到底稼げないような大金を稼いでしまいます。
こうなってくると、僕のお金儲けに対する熱はもう止まりません。
結局、2週間の福岡旅行は、ノリヒサまでも巻き込み、ほとんどこのお金儲け弾き語りだけに費やされることになってしまったのです。
しかも、一度走り始めた20歳の僕は、これだけでは終わりませんでした…。
さあ、そこまで分かってもらった上で、続きをどうぞ!!
(って、たったこれだけのことを、何年もかけてダラダラ書き続けてたこのブログって、ある意味すごい…。笑)
「芽生え」からの続き…
2週間後、ノリヒサがイギリス留学に出発する前日。
ノリヒサのマンションでは、僕が意を決して再びノリヒサに無茶なお願いをしていた。
「なあ、ノリヒサ。
このマンションって、ノリヒサが出て行った後、どうなんの?」
「え?
えっと、10月の中頃に親父が福岡に帰ってくるから、それまでは多分空き家やで。
何で?」
「そっか。
えっとな、今からまた無茶なお願いするけど、これはあくまでもお願いやからダメでも全然かまへんし、とりあえず聞くだけ聞いてくれ。」
「うん、何、何?」
「えっと、ほんまやったら、ノリヒサももう日本から出発するわけやから、予定通り俺も大阪に帰るべきやと思うねんけどな、
この前も言ったみたいに、俺、こんなに楽しくて充実してることって生まれて初めてやねんやんか。
そんで、このまま帰ったら俺な、大学始まる10月まで消化不良の気持ちだけが残って、結局何にも手につかんとバイトなんかもほとんど出来へん気がするねんな。
だから俺、やっぱり大学始まるギリギリまでの間、もう自分が納得するまでこの弾き語り続けてみたいねん。
もちろん、お金がむっちゃ儲かるっていうのもあるしな。」
「うん。」
「そんで、もしよかったら、鍵は後でちゃんと親父さんに郵送するから、10月までここに俺を住まわせてくれへんやろか。
もちろん、めっちゃ自分勝手なお願いやっていうことは分かってるし、無理やったら無理で全然かまへんねん。他に方法考えるから。
ただ、聞いてみるだけでもいいから、一回親父さんに聞いてもらわれへんやろか。」
「けど、ここって、もうすぐ電気とガスが止まっちゃうで…。」
「え、そうなん?
…いや、全然かまへん。どうせお昼は明るいし、夜は寝るだけやから、懐中電灯一個あればなんとかなる。」
「…うーん、そっかー。
まあ、俺も今までたかゆき氏には散々世話になってるし、たかゆき氏がそこまで言うなら、一回親父に聞くだけ聞いてみてあげてもいいけど。」
「ほんまか!ノリヒサ、ありがとう。」
そして、なんと、この後本当にお父さんの了解を得ることが出来た僕は、結局それから9月一杯までの約1ヵ月半、ほんとにこのマンションを一人で使わせてもらえることになったのである。
(しかしまあ、どこまでずうずうしい20歳なんだろう…。苦笑)
ただ、
次の日、僕がノリヒサを空港まで見送りに行った時、出発直前になって彼が真剣なまなざしで言った言葉が今でも僕の心から離れないでいる…。
「なあ、この前は冗談で言ったけど、2年後に俺が日本に帰って来た時に、たかゆき氏までが外山さんみたいに弾き語りで生活してるっていうのだけはほんまにやめてな。」
「なんでそんなふうに思うねんな。そんなことあるわけないやん。」
「そうかなあ。俺はそれだけが気になる。」
それからの1ヵ月半。
それは、まさしく青春の日々と呼べるような輝いた毎日だった。
もちろん、電気の通っていない広いマンションで一人で過ごすというのは、少しは寂しいことだったんだろうけど、
僕にとっては、それよりも旅の高揚感の方が上回っていたし、なにより、日々の弾き語りで儲かるお金とその興奮が高揚感を倍増させていた。
やっぱり、よっぽどこのお金儲け弾き語りというものが、元来僕の肌に合っていたんだと思う。
それに、外山さんのようにこれが仕事というわけではなかったから、責任感や焦りなんてものも感じる必要がなかったし、たくさんのお客さんとの交流もすごく楽しかった。
そして僕は、この弾き語りを続けるうちに、外山さんともどんどん仲良くなっていき、マンションに帰らずに外山さんの家に入りびたることも多くなっていった。
外山さんの家は、変わった人達の出入りも多く、サブカルチャー的なものもたくさん置いてあったから、若かりし僕にとっては、非常に刺激的で興味深い場所だったのである。
ボブ・マーリーを生まれて初めて聴いたのも外山さんの家だし、ニール・ヤングを初めて聴いたのも外山さんの家だった。
僕の大好きなマンガ、「迷走王ボーダー」を初めて読ませてもらったのも外山さんの家だ。
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ボーダー 1 デラックス版 (アクションコミックス) 著者:狩撫 麻礼 |
もちろん、弾き語りで覚えるべきフォークソングもたくさん教えてもらった。
そうして僕はレパートリーも少しずつ増え、ますます弾き語りが楽しくなっていくのだった。
季節が夏だというのも良かったと思う。
朝まで暖かい中州には、常に色んな人が集まり、お客さん以外にもたくさんの出会いがあった。
いつも決まって「とんぼ」をリクエストする客引きの兄ちゃんや、とにかく弾き語りを毛嫌いする似顔絵描きのおっちゃん。
優しい人情にもたくさん出会った。
いつもタダでホットドッグをご馳走してくれた移動式ホットドッグ屋のおばちゃん。

いつもトイレを快く貸してくれた博多ラーメン屋のおばちゃん。
最終日には、わざわざ僕のために差し入れまで持って来てくれた。
いつも路上で詩を書いていた2人の女の子。
この子達も、9月の最後には肌寒いからって、上着を持ってきてくれてそれをくれた。

とにかく、
合計2ヶ月のこの福岡滞在は、お金儲け弾き語り以外にも、ほんとにたくさんの刺激的な出来事があり、僕の頭の中には強烈に楽しいイメージだけがインプットされたのである。
もちろん、今まで手にしたことのないような大金と共に…。
僕が大阪に戻る日。
高速バス乗り場には、外山さんがサプライズで見送りに来てくれていた。
そしてまた、こんな話をするのだった。
「せっかくだから、大阪に戻ったら、たかゆき氏もこの弾き語りで生活していけば?」
「もー、外山さんまでそんなこと言わないでくださいよー。
僕にはそんな気ないですってば。(笑)
これは、ただのひと夏の楽しい思い出なんですから。」
…20歳のたかゆきくん、
君にはよっぽど自分の未来を見る目がなかったんだね。(苦笑)
大阪編につづく…。
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ああ、やっと後1、2回で終われそうです。
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→「覚醒」
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