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2009年10月 6日 (火)

芽生え

「書を捨てよ、ギターを持って町へ出よう」からの続き…

 

「ノリヒサに色々手伝ってもらったとはいえ、まさかこんな結果になるとは夢にも思わんかったなあ。

もしかして、俺は自分のすごい才能を発見してしまったのかもしれんわ…。」

 

「そうやね。

けど、だからってたかゆき氏までこれで生活するとか言い出さんでよ(笑)」

 

「あははは。さすがにそれはないわ(笑)」

 

午前3時。

今日の弾き語りを終えた僕が、ノリヒサとそんな談笑をしていると、

どこからか、ギターケースを手に持った外山さんが現れた。

 

「お、やっぱりいたね。

今日もやるっていってたから、今ぐるっと一回り探してたところなんだよ。」

 

「わー、外山さん!

探してくれたなんて、わざわざありがとうございます。

外山さんも、今終わったとこなんですか?」

 

「うん、そうそう、さっき終わったとこ。

いやー、今日は金曜だから人多かったでしょ。

どう、たかゆき氏(ノリヒサの影響で昨日から外山さんもそう呼んでる)は儲かった?」

 

・・・・・・・・・。

僕は一瞬戸惑った。

ここまで儲けてしまうと、これは言っていいものなのか、どうなのか…。

 

「…え、ああ、まあそうですね。

外山さんはどうでした?」

 

「え、僕?

僕はねえ、金曜だから2万3千円くらいだったよ。」

 

…外山さんが2万3千円。

どうしよう、やっぱ言われへん…。

 

「で、たかゆき氏はいくらだったの?」

 

「…えっと、まだ数えてないんでよく分からないんですけど、多分、1万8千円くらいかな。

とにかく、外山さんに教えてもらった通りやったら、めっちゃ儲かりましたよ!

すごいんですね、この弾き語りって。」

 

「そうなんだよね、もう暮らせちゃいそうでしょ。(笑)

1万8千円ってことは、たかゆき氏も才能あるのかもね。」

 

中途半端な嘘をついてしまった僕は、なんだか複雑な心境になっていた。

ちゃんとした金額を言って、もっと褒めてほしいような、やっぱり言っちゃいけないような…。

(今考えると、外山さんに嘘つく必要なんか全くなかったんだけど…。笑)

 

「ところでさ、2人とも今日はウチに泊まりにきませんか?」

 

「え?」

 

僕とノリヒサは顔を見合わせる。

しかし、ノリヒサの答えを聞くまでもなく僕は即答していた。

 

「いいんですか!是非、是非!!」

 

だって、さっきノリヒサにはああ言ったものの、実際には、僕のこの弾き語りに対する興味と、さらにこの弾き語りで生活しているという外山さんに対する興味は、昨日にも増して強大なものになっていたから…。

 

 

 

外山さんの家は、中州から車で15分くらいの小高い山の中腹にあった。

外山さんは原付だったので、僕たちは外山さんの先導でタクシーでそこへ向かった。
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(お金ならたんまりあるから。笑)

 

外山さんの部屋は間取りが2Kで、お風呂はついておらず、家賃は27,000円。

しかし、その割にはかなり広く、部屋に上がると、さすがに文筆業もされてるだけあって、そこには大量の本や書籍が並んでいた。

他にもマンガ本やビデオやCDもたくさんあり、ほぼ弾き語りだけでほんとにこんなちゃんとした生活が出来るんだなと感心したと同時に、まだあんまりものを知らない好奇心旺盛な20歳の僕は、そこにあるもの全てに興味を持った。

 

寝るまでの間、僕は、今日弾き語りであったこと、思ったことなどを全て話し、外山さんからもさらに詳しい弾き語りに関することや、今までの生活や人生のことなどたくさんのことを話してもらった。

外山さんの話す内容は、改めて僕にとってカルチャーショックなことばかりで、僕は熱に浮かされたように夢中になってずっと外山さんの話に耳をかたむけていた。

 

 

 

そして、あくる日の土曜日。

この日の夜になると、僕たちはもう当たり前のように外山さんと一緒になって中洲に弾き語りに出かけた。

 

そしてまた、昨日と同じように儲けてしまう僕。

この日の弾き語りを終えた僕は、ノリヒサにこんな宣言をした。

 

「ノリヒサ、すまん。

せっかくお前が誘ってくれた福岡旅行やけど、俺、もうお前がイギリスに留学してしまう2週間後までずっと夜はこの弾き語り続けようと思う。

なんか、こんなに楽しくて、ワクワクすること初めてやねん。

しかも、それがこんな大金になるなんて…。

こんなの、ここ中洲やからこそ成り立つことなんやと思うし、もしかして一生味わわれへんことかもしれんから、後悔せんように福岡に滞在してる間だけは、出来る限りのことしたいねん。

だから、これからはノリヒサは付いてこんでいいから、俺一人だけでも中州に通うわ。

ごめんな。」

 

「たかゆき氏がそこまで言うなら、分かった。

けど、一人でなんか行く必要ないよ。

せっかくやから、俺も最後まで付き合うよ。」

 

 

こうして僕たちは、結局ノリヒサが出発するまでの2週間、(中洲に人が少ない)日曜日と雨の日以外は毎晩のように中州に出向いてお金儲け弾き語りを続けたのである。

そして、あっというまに2週間という日は過ぎていった…。

 

つづく…。

 

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