書を捨てよ、ギターを持って町へ出よう
みなさんは覚えているでしょうか。
このブログで、ちょうど2年ほど前に書き始めた「始まりの物語」。
これは、僕がどういったいきさつでこの仕事を始めることになったのかを綴った、完全なる自己満足自叙伝だったんですが、
僕の性格上あまりにも事細かに書きすぎて、とんでもなく長い連載になってしまい、
結局、未だに完結させることができていなかったいわく付きのお話なんです。
そこで今日は、そのいわくを解消するためにも、約1年ぶりに「始まりの物語」の続きを書き始めたいと思っています。
ただ、相変わらずの自己満足っぷりな内容ですし、
1年も前からの続きの話ですので、さかのぼって読み始めないと流れがよく分からないという、読む側にとってはかなり拷問に近いシリーズとなっていますので、
あきらめて引き返すなら、今のうちです。(笑)
では、見事その拷問に耐え切った猛者だけ、続きをどうぞ。
「見るまえに跳べ」からの続き…
さて、
生まれて初めてギターケースを開けて、いきなり6,800円も儲けてしまった僕。
しかもそれが、たった1時間半の出来事だったのいうのだから、弱冠20歳の若者が有頂天になってしまうのも無理はない。
当初はただの観光&羽伸ばしだったはずの福岡旅行も、初日からさっそく趣旨が変わっていきそうな勢いである。
それを証拠に、次の日僕はお昼ごろ目を覚めると、夕方までの時間をすべてその日の弾き語りのための準備にあてた。
その準備というのは具体的に言うと、自作の「リクエスト表」、つまりは「レパートリー表」みたいなものを作るということ。
これは昨晩外山さんが教えてくれたノウハウから自分なりに考えたものなんだけど、
外山さんが言うには、やっぱり僕が昨日感じたように、この弾き語りはおじさん世代に向けてだけ歌を歌うのが最大の秘訣らしく、さらには、その人達のリクエストに応えられるのがベストらしいのだ。
やはり、自分の歌いたい歌や好きな歌を歌い続けても絶対にお金にはならない…
と、そういうことらしい。
けど、この頃の僕が、そういったおじさん向けの曲、つまりはフォークソングのようなものをそんなにたくさん知ってるわけもなく、昨晩のようにごく短い時間ならまだしも、本格的に長時間弾き語りをしようとすれば必然的にフォークソングのレパートリーが足らなさ過ぎる。
かといって、相手が知らない曲を歌って、結局あんまりお金にならないのも嫌だ。
(なぜなら今の僕は「お金」の事で頭が一杯だから!←2回目)
そこで僕は、
じゃあフォークソングは少なくても、とにかく今自分が歌える曲を全部書いたレパートリー表みたいなものを作って、歌を聴いてくれる人にはそこから知っている曲を選んでもらおうと考えたわけである。
相手が選んだ曲なわけだから、それならフォークソングではなくても少しはお客さんも関心をよせてくれるだろう。という魂胆。
ナイスアイデア、たかゆきくん☆
とにかく、そんなこんなで夜8時半。
今日の僕とノリヒサは、昨晩とは違い、「一万円」を儲けるという確固たる目的を持って、ここ中洲にやって来た。
昨日の場所は誰か違う人が歌っていたので、今夜は自分なりに人通りが多そうな場所を探して、そこで準備を始める。
まず、近くの酒屋からビール瓶の空ケースを拝借してきて、それを裏返しにしてイスの代わりにし、開けたギターケースの内ぶたには、お昼に書いた「大阪から来ました。どうぞお気軽にリクエストしてください。」という大きめの紙を貼り、その横に「リクエスト表」を立てかける。
そして最後に、ギターのチューニングをして、準備完了。
さあ、これでいよいよ、僕にとって人生で2回目の、そして昨日とは全く気合の違う本格的なお金儲け弾き語りのスタートである。
ただ、
スタートとはいっても、昨日のようにここでいきなり歌を歌い始めるわけではない。
実は、これも昨日外山さんから教わったノウハウのひとつなんだけど、
お金をよりたくさん儲けるには、ただやみくもに歌を歌い続けて人が立ち止まってくれるのを待つんじゃなくて、
初めは歌なんて歌わなくてもいいから、とにかくまず、道行く人を立ち止まらせることだけに専念して、
「おとうさん、一曲どうですか!」なんて掛け声と共に右手を前に突き出し、
それに反応して立ち止まってくれた人にだけ、リクエストを聞き、そこからようやく歌い始める。
そういったやり方のほうが、結果お金になりやすいというのだ。
なるほど、その方が相手にもちょっとした特別感を与えられるということだろうか。
ただ、そんな弾き語り、今まで見たこともないし、
なにより、歌も歌わず、そんなやり方でほんとにお客さんは立ち止まってくれるものなのだろうか…。(苦笑)
とにかく僕は、半信半疑ながらも、さっそくそれを実践してみることにした。
今日の中洲は、金曜日の夜ということで一段と活気に溢れ、目の前をひっきりなしに人が行き交う。
そんな中、道端のギターの兄ちゃんが、突然「一曲どうですか!」だなんてそこらの客引きみたいな声掛けをするのは、やっぱり思った以上にかなり恥ずかしい…。
モジモジしてなかなか踏ん切りのつかない僕は、横にいるノリヒサに助け船を求めた。
「どーしよー、ノリヒサ。やっぱり歌歌ってなかったら、恥ずかしくて声なんかよう掛けられへんわ。」
「けど、たかゆき氏、ここはどうせ大阪じゃないんやから、知ってる人もおらんし、そんな恥ずかしさなんて全く気にしなくてもいいんじゃないの?」
あ、そっか!ここは福岡やった。大阪じゃないんや!
しかも、ただの旅行中やし、なんも恥ずかしがることなんかないやんか。
そうや、旅の恥はかき捨てや!
インドの挨拶はナマステや!
サンキュー、ノリヒサ!
バイバイ、ガンジス!
そう吹っ切れた僕は、今度こそ大きな声で客引きを始めた。
「一曲どうですか!」
しかも、なるべく愛想良く見えるように、満面の笑顔で。
「そこのおとうさん、一曲どうですか!一曲聴いていきませんか!」
行き交う人々は、突然の声掛けに最初はビックリするものの、僕があまりにもの笑顔で呼びかけてくるので、立ち止まりはしなくてもみんな一様に笑顔で通りすぎて行く。
僕もそれに安心して、ますます愛想良く声を掛けていく。
さっきまでの恥ずかしさなんてどこへやらである。
ただ、ここで気を付けなければいけないのは、間違っても若者には声を掛けてはいけないということ。
外山さんが言うには、若者はお金にもならない上に、すぐにタムロしてしまうから、商売としては絶対に避けなければいけない人種らしいのだ。
僕はそれに気を付けながらも、さらに自分なりにお金を払ってくれそうな中高年を選別して(←やらしい!)、ピンポイントで声を掛けていった。
そうこうするうち、1,2分。
このピンポイント作戦が功を奏したのか、さっそくひとりのおじさんが立ち止まった。
「お、なんで俺に声を掛けてくれたと?
嬉しいけん、一曲歌ってもらおうかね。」
おお、もう来た!
なんでも恐れずに試してみるものである。
僕はさっそく「リクエスト表」をそのおじさんに見てもらい、その結果、井上陽水の「少年時代」を歌うことになり、
歌い始めると、間奏や2番なんかでは、ノリヒサが機転を利かせて、おじさんが退屈しないようにちょっとした世間話をしてくれてるなどして、
連携プレーで一曲歌い終えた。
すると、そのおじさんは、
「いいねえー、若者。頑張りんしゃいよ。」
などと、千円札をギターケースに入れて、笑顔で立ち去っていった。
…わお!さすがの外山理論!
いきなり、すげー!
ふむふむ。
確かに、歌を歌っていなくても、愛想さえ良くすれば人は立ち止まってくれるようだし、
その後にこういった形で歌を聴いてもらえれば、いくら当時の僕みたいなヘッポコな歌でも、その人だけのために歌ってるんだという付加価値が付いて、まとまったお金を入れてもらいやすいのかもしれない。
しかも今の僕には、飽きさせないためのノリヒサのサポートまで付いているんだから。
ふふふふ。
このやり方はほんとにいいかも知れん。
それに、この千円には、昨日の千円とはまた違った喜びがある。
自分から仕掛けていった千円というか、もらうべくしてもらった千円というか…。
とにかく、普段ぬるま湯の大学生活を送っている僕にとっては、すごく大きな意味を持つお金である。
この後、
気を良くした僕は、ますますコツをつかみ、次々とお客さんを立ち止まらせ、歌以外にも、時には僕が時にはノリヒサが、大阪から来たことなどのたわいも無い世間話を織り交ぜつつ、
結局何人もの方から千円札を入れてもらうことができた。
しかもそれだけではなく、お客さんに歌っている最中にも、通りすがりの人達が小銭を投げ入れていってくれるものだから、
僕のギターケースの中には、どんどんお金が増えていき、昨日外山さんもやっていたように、あんまり多いとやらしいのでいくらかお金を隠すという作業までしなくてはならないほどになっていった。
そして、午前3時。
ようやくこの日の弾き語りを終えた僕たちが、人目を避けて数えた今日の儲けの合計が、28,000円なんていう(当時の僕にとっては)とんでもない金額だったのである…。
ただ、
開始から数時間の時点でも、僕はもうすでに感づき始めていた。
今日の大目標である「一万円」という金額はあっというまに超えてしまうだろうということと、
僕にはこのお金儲け弾き語りの才能がかなりあるんだということに…。
もちろん、外山さんから聞いたノウハウや、ノリヒサのサポートのおかげもあるのは重々分かっているのだが、
それ以上に、
僕の、八方美人を演じきれる性格や、人に対する洞察力、それに今までつちかってきた弾き語りに対する慣れや工夫など、
とにかくそういうあらゆる面が、この弾き語りでのお金儲けというものに、がっつりハマっているということを感じたのである。
ただそれは、だからといって、すぐにこれを仕事にしようなんて大げさなものではなくて、
なんとなく心の奥でそういう事を感じたという程度のことなんだけども…。
とにかく、
今日一日の弾き語りを終えた僕は、今までのバイト終わりなどでは決して味わったこのとのない、とても心地よい疲労感と何ともいえない充実感に包まれていた。
つづく…。
P.S.
相変わらず、細かい話を詰め込みすぎで、全然前に進みませんね。(笑)
けど、今はせっかくの「本編じゃないよ編」なので、書くのがしんどくならない程度にほどほどに小分けにしてでもなんとか完結させたいと思っています。
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