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2009年8月21日 (金)

怪談「傘女」

(注;今回、久しぶりに長いです。)

 

僕の家はマンションの1階の角部屋なので、ベランダがマンションの狭い裏庭に面しています。

その裏庭は、

平日の昼間なんかは、たまに昼休みの高校生数人がどこからかそこに入り込んできて隠れてタバコを吸ったりするような、

そういう表通りからは少し外れたほんとに狭い裏庭なんですが、

一応はそこもマンションの敷地なので、基本的に部外者は立ち入り禁止ということになっています。

まあでも、高校生がタバコを吸ってるぐらいは僕も気にはならないので、そんな時は特に何もせず放っておいてるんですが、

それでもさすがにあんまりうるさい時だけは、髪の毛ボサボサのままベランダに出て行って、

「泣く子、いねーがあー!?」

などと…、

あ、違う、

「なあ自分ら、一応ここ人住んでるんやんか。
そんで俺、夜から仕事やから今は寝なあかん時間やねんな。
だから悪いけど、ほか行ってしゃべってくれるか。」

などと、彼らを追い払ったりもします。

だから彼らの高校では確実に、

「年齢不詳で髪の毛ボサボサのヤバいおっさんが住んでる怪しいマンション」

として噂になってるでしょう。(笑)

もしかしたら、そのヤバいおっさん見たさにわざわざタバコを吸いに来てるのかもしれません。

 

いやいや、今日はそんな話をしようとしてたわけじゃありません。

とにかく、僕の家のベランダはそんな裏庭に面しているんですが、

そうは言っても、夜になればやはり表通りから外れてることもあり、さらに街灯もなく真っ暗なので、普段そこに人が入ってくるようなことはまずないんです。

と、

そこまでを分かってもらった上で、では、つい1週間ほど前の話です。

ここからはわたくし、稲川淳二がお送りします。(ちょっとダミ声で)

 

 

 

えー、それはー、ある暑い夏の夜のお話。

だいたい深夜3時ごろのことでしたー。

わたくし、部屋で一人テレビの深夜放送などを見ておりました。

画面はどこか他の国のちょっといやらしい映画の一場面。

あー、エロいなー、エロいなー。

いいなー、いいなー。

などと、ほくそ笑んでたその時、

 

ドン。

 

…。

それはほんの小さな物音だったんですが、ベランダの方で何か少し人の気配がしたような…。

あー、怖いなー、怖いなー。

いやだなー、いやだなー。

こんな時間に人が入ってくるわけないのになー、怖いなー、怖いなー。

もしかしたら猫かなー。

そうだったらいいんだけどなー。

けど猫だったらもっと音が続くよなー。

あー、怖いなー、怖いなー。

 

わたくし、あまり気にしないように、もう一度テレビの方に視線を戻します。

あー、やっぱりこっちはエロいなー、いいなあ、いいなー。

 

しかしエロいシーンが終わり少し経ちますと、やはりどうしてもベランダの方が気になるわけです。

そこでわたくし、テレビの音量を下げ、そっと聞き耳を立てます。

あれからもう物音は一切しないんですが、

何だか妙に気になるんです。

気配といいましょうか、それとも第六感とでもいいましょうか…。

そこで人がじっと身をひそめているような…。

 

そこでわたくし、覚悟を決めて、ベランダの方に向かいます。

1歩、2歩…。

ゆっくーり、ゆっくーりと、息をひそめて…。

ベランダへ出るガラス戸に到着。

まず、ゆっくりとカーテンを開けます…。

そして、鍵を開け、ガラス戸もそっと開けていきます…。

あー、怖いなー、怖いなー。

誰かいたらいやだなー。

ギギギギ…。

ガラス戸が開き、恐る恐るベランダに出ます…。

 

しーーーん。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・。

 

ふう…。

真っ暗で見えにくいですが、どうやら裏庭には誰もいないようです。

ああよかった、気のせいか…。

そう思い、念のため最後にベランダの柵のあちら側を覗き込んだその時…、

 

 

ぎゃああああーーーーーーー!!!!

 

 

 

な、なんと、

ひ、人がベランダの柵に隠れるようにしゃがみこんでいたんです!!

ひぃーーーー!!!

 

(ああ、もう怖すぎて、稲川淳二もどーでもいいわ。
文体をいつもの感じに戻します。笑)

 

とにかくそれがどれだけ怖かったことか…。

こんな時間のこんな場所にまさか人が隠れていようとは…。

 

僕は驚きで体をのけぞらしながらも、もう一度よく目をこらす。

やはり暗くてハッキリとは見えないが、どうやら髪の毛の長い女性のようだ。

女性はしゃがみながらこちらを見上げている。

 


「な、何してんすか、こんなとこで!」

 

女性
「え、えーっと、ちょっと気分が悪くて、ここで休ませてもらってました。

すぐに行くので気にしないでください。」

 

声から察するに、中年の女性だろうか…。

 

「気にしないでくださいって言われても、一応ここ僕の家なんで…。(苦笑)

っていうか、

なんか分かりませんけど、大丈夫なんですか?

気分悪いんやったら、救急車でも呼びましょか?」

 

「いえ、大丈夫です。

ほんと、ちょっと休んだらすぐに行きますんで。」

 

「うーん…。

じゃあ悪いですけど、少ししたら他のところで休まれてくださいね。」

 

 

 

5分後。

部屋に戻った僕は、正直もうテレビどころではなくなっていた。

とにかくあの女性の存在が気になって気になって仕方ないのである。

だって、いくら休んでるだけとはいえ、こんな時間にすぐそこで人がうずくまってると思ったら不気味すぎるじゃないか…。

ただ、

さっきからまた物音はしなくなってる。
(それがまた逆に怖いんだけど…。苦笑)

やっぱり、約束通りもうどこかに行ってくれたんだろうか。

 

 

10分後。

僕は我慢できなくなって、もう一度外の様子を見に行くことにした。

ただ今度は、冷蔵庫から500mℓのペットボトルのお茶を持っていくことにした。

さすがにもういないとは思うけど、万が一まだいるんだとしたら、

こんな時間にそこまで気分が悪いっていうのは、もしかしてお酒を飲みすぎたんじゃないかと思ったからだ。

けどそれは、決して相手をいたわってとかの気持ちじゃなく、ただ単に、

これ飲んで早くどこかに行ってくれ

という気持ち。

 

とにかく僕はそのお茶を持ってベランダに出た。

 

 

しーーん。

 

相変わらず外は静まり返っている。

柵の向こうを覗き見る。

 

うわ!

いた!まだいた!!

 

そこには、

あの女性がさっきの状態のまままだしゃがみこんでいたのだ…。

 

 

「あのー、そんなに具合悪いんやったら、ほんまに救急車呼びますよ。」

 

「いや、大丈夫です。

ほんとにすぐ行きますから。」

 

「お酒でも飲みはったんですか?」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

「えっと、もしあれやったら、冷たいお茶ありますんで、これ飲んで少し休んだら、

申し訳ないですけどここから早く出て行ってもらえますかねえ。」

 

「ありがとうございます。

はい、すぐ出て行きますんで。」

 

 

僕はもう一度部屋に戻った。

ふう…。

さすがにこれであの女性もどこかに行ってくれるだろう。

言い方は悪いかもしれないが、後は僕の知ったこっちゃない。

そう思うと、僕はなんだか一仕事終えたような気分になって、ようやく少し落ち着くことができた。

 

 

それから15分ぐらい経っただろうか、

その頃になるとやっと僕も女性のことは忘れて、今度はネットサーフィンに夢中になっていた。

あー、やっぱりネットもエロいなー、いいなあ、いいなー。

(↑これはウソですよ。汗)

そんな時である。

 

コンコン。

 

!?

 

突然、音がしたのである。

ベランダの方からガラス戸を叩く音が。

  

僕は腰が抜けそうになった。

もちろん、まだ女性がいたのかということにも驚いたのだが、

それよりなにより、

ガラス戸を直接叩いてるということは、あの女性が柵を乗り越えてベランダに入ってきたのではないかと思ったのだ!

 

もー、何、何?ウソやろ?ちょっとー、怖いって。

 

僕は恐る恐るガラス戸に近づいていき、そっとカーテンを開ける。

うちのガラス戸はすりガラスになっているのだが、特にそこに人影は見えない。

 

え、何?どういうこと?

 

そして次にガラス戸を開けようと手をかけたその瞬間、

 

コンコン。

 

わ!

今度は目の前でガラス戸が鳴った。

よく見ると、黒い点のようなものがすりガラスを叩いている。

 

もー!何?

 

僕は勢いよく扉を開ける。

すると目の前には、立ち上がってベランダの向こうから傘の先っぽでガラス戸を叩こうとしているさっきの女性がいた。

思わぬ形で傘の先っぽと対峙することなった僕。

ちょっとイラっとしてきた。

 

「は?もうなんですの!?何の用なんっすか?

っちゅうか、傘でウチのガラス叩かんでもらえますか。」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

女性はただ黙って、どういうわけかちょっとニヤついている。

立ち上がったことで、ようやくこの女性の顔がよく見えるようになったのだ。

やっぱり40代中ごろぐらいだろうか、少しやつれた細身の顔で、チリチリの長い髪、暗さも相まってほんと幽霊みたいな印象である。

 

「で、なんでまだいてはるんですか?

すぐ出て行くって言うたやないですか。

お茶飲んで少しでも元気になったんなら早く他のとこに行ってくださいよ。」

 

すると、

そんなイラ立つ僕をよそに、女性の口から驚きの言葉が…。

 

 

「…ふふふふ。

部屋に入れてよ。

泊まらせてよ。」

 

 

 

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・。

 

…はぁ??????

 

 

僕はあまりにも意味不明な発言に、

驚きすぎて、一瞬言葉を失った。

女性の方はますますニヤニヤし、部屋の中を覗こうとまでしている。

 

「ねえ、だからそこに入れてよ。

泊めてよ。分かるでしょ?ふふふ。」

 

「…ちょ、ちょい、ちょい待った。

おたく、ほんま、何わけわからんこと言ってますのん?」

 

「だから、部屋に入れてって言ってるの。」

 

「…は?ええ加減にしなさいや。

なんでアンタ入れなあきませんの?」

 

「だって、優しくしたでしょ。

じゃあ、なんで優しくするのよ。」

 

 

…はぁ??????(パート2)

 

 

「優しくって…。

そんなつもりでお茶あげたわけないでしょ!!

どんな勘違い女やねん。

ただこんな家の前におられたら気味悪いし、

早くどっか行ってほしかっただけですやん!」

 

「もう。

いいから、早く入れてよ。ふふ。」

 

何が「もう。ふふ。」じゃ。(苦笑)

あかん。

ラチがあかん…。

 

「おい、しまいに怒りまっせ。

早くどっか行けって言うてますねん。

それ以上ここでわけわからんこと言っとったら、警察呼びますよ。」

 

傘女はそれでもただニヤニヤしている…。

 

「おい!聞いてんのか!オバハン!

勘違いすんなっつってんねん!気持ち悪いねん!

次見に来てまだおったら、ほんまに警察呼ぶからな!」

 

 

僕はそのままガラス戸をピシャリと閉め、部屋に戻った。

 

・・・・・・・。

ああ、怖い。

というか、

もう怖いやら、わけが分からんやら、気持ち悪いやら、腹が立つやらで、頭の中がぐちゃぐちゃだ。

なんなんだ。

ほんと、なんなんだ、あのオバハンは。

気分悪かったんちゃうんかい。

それなのに、あの豹変ぶりはなんだ。

どうやったらあそこまでの勘違いができるんだ?

意味が分からん。

ああ、怖い。

ほんとに怖い。

お化けより怖い。

 

 

それからしばらく僕は、ずっと傘女の恐怖に打ち震えていた。

さすがにもう何も手につかない。

けど、

ここにきてさえまだ、僕は彼女のポテンシャルを見くびっていたのかもしれない。

 

だって、

それから数分後に、またガラス戸が傘の先っぽで叩かれることになるのだから…。

 

 

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

イヤーーーーー!!!!!(号泣)

 

 

 

 

 

 

 

さて、

この後僕は暴走機関車のようにベランダに飛び出し、

「分かったから、早く入れてよ。」

とまたしても懲りずにニヤつく傘女に向かって

「コラ!キ○ガイばばあ!!お前そこで待っとけ、今からマジで警察呼んだるからゲボっ$%&☆@#♪★!!」

などと、大声で携帯でそのまま警察にかけるフリをし、

それを見た妖怪傘女は、

ニヤつきながらもようやくその場から立ち去っていったとさ。

 

めでたし、めでたし。(どこが?)

おー、怖っheart01

 

 

以上、

そんな、ある夏の夜の素敵な出会いのお話でした☆

 

 

P.S.

真面目な話、もしマンションの1階に住まれてる方がいらっしゃったら、特に夏場はほんとに気をつけてくださいね。

世の中、どんな人がいるか分かりませんから。

いや、マジで。(苦笑)

 

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