スカウト男
前々回の話を書いていて思い出したんだが、実は僕は4年ほど前ほんの短い間だけ、今歌っている飲み屋街の中にある高級ラウンジでミュージシャンとして雇われて歌っていたことがある。
今日はその時のことを書こうと思います。
ある夜、すごく熱心に僕の歌を聴いてくれていたある一人の男性が、突然僕に名刺を差し出してきた。
見た目は50歳すぎぐらいでスーツ姿だったので、てっきりサラリーマンの方かと思っていたがどうやら違うみたいで、名刺にはこの飲み屋街のどこかのラウンジの名前が書いてあった。
「えっと、私はこの店のオーナーなんですが、少しお話よろしいですか?」
「あ、はい、何でしょうか…?」
「さっきから聴かせてもらってたんですけど、ほんとに歌お上手ですよねえ。」
「いえいえ、めっそうもないです…。」 (←ほんとは嬉しい。笑)
「実はですね、私、約1ヵ月後にこのお店以外にもうひとつ新しいラウンジをオープンさせるんですけど、今そこで定期的に音楽を演奏してくれる歌手を探していまして、もしよかったらあなたにその店で歌っていただけないかと思いまして…。」
いわゆるこれは、スカウトである。
みなさんは一見、こういう風に街のストリートミュージシャンがお店の歌手としてスカウトされるのはすごく喜ばしい事だと思うかもしれないが、僕にとってはちょっと違う。
僕の場合、いつも言っているがこの仕事の目的が歌手になるためとか将来につながるようなそういう類いのものではないので、こういう風にお店なんかで雇われて定期的に活動してしまうと、妙に安定してしまってほんとにこういう世界から足を洗えなくなっていってしまう気がするのだ。
(これまたいつも言っていることだが)だから、こういうお誘いはいつも全部お断りすることにしている。
それに、やらしい話、実際こういう仕事の1日のギャラはそこまで高いものではなくて、正直なところいつも通り道で歌っているほうがよっぽど儲かるのだ…。
↑
(ほんと、やらしい!笑)
というわけで、この時も丁重にお断りさせていただいたんだけど、それからがいつもと違った。
なんとこのオーナー、その日から1週間ぐらい、毎日のように僕が歌ってるところに通っては、毎回僕を熱心に説得し続けたのである…。
「ほんと、なんとかお願いできませんか!もうあなたしかいないんですよ。」
「いや、そう言われましても…。
いっても僕は、これで暮らしてるには暮らしてますけど、所詮道で歌ってるだけの人間なんで、実際歌もお店で歌わせてもらうようなそこまで大したものではありませんし、それに何といってもレパートリーが昔のフォークソングしか無いですから…。」
「何を言ってるんですか、昔のフォークソングだけで十分ですよ。
ウチの店に来るようなお客さんは、みんなそういう年代の方ばっかりですから、フォークソングみたいな歌だからこそ喜ばれるんじゃないですか!
そして、ウチで働く若い女の子達にもフォークソングの素晴らしさを分からせてやってくださいよ。」
「・・・・・・・。
けど正直な話、僕にも生活というものがありますので、収入的な面においてもこの路上演奏をやめるわけにはいかないんですよ。」
「いつもここで何時から何時頃まで歌われてるんですか?」
「えっと、だいたい9時すぎから夜中の2時すぎぐらいまでですかね。」
「じゃあ分かりました。ウチで歌うのは8時から10時半までの2時間半だけでいいので、それからまたここに来て歌われたらいいじゃないですか。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
(何て、強引で一方的なお願いだろう…。苦笑)
とにかくこんな会話が毎日のように続き、1週間ぐらいたった最後の最後には
「もう、1ヶ月だけでもいいんで、とにかく『試し』にだけでも歌いにきてください。
後の事はそれから考えてくれて結構なので。
とにかく、試しにだけでもどうかお願いします!!」
なんていう話に変わるくらいの、熱烈なスカウトだったのである。
うーん…。
1ヶ月だけかあ…。
しかしまあ、何をそこまで僕にこだわるのか、よっぽど他に歌う人がいないのかよく分からないが、ここまで熱心に自分が必要だとお願いされると、そんな経験なかなか無いので、何だか悪い気がしないでもない気がしてくる。
それに、こんな風に毎日のように足を運んでもらってるのも少し気が引けるしなあ…。
うーん…。
そやなあ…。
こんな経験できるのも今だけかもしれんもんなあ…。
よし、
もうこれも何かの人生経験のひとつとして、1ヶ月限定で引き受けさせてもらうか。
「じゃあ、ほんとに1ヶ月だけでもいいと言われるなら…。」
「おお、そうですか!!
よかった!ほんとうによかった!!!」
というわけで、あまりの「押し」に折れた当時26歳の僕は、この数週間後短い間ではあるが、人生初の高級ラウンジシンガーとしての仕事を始めるのであった…。
つづく…。
そんな小分けにするような話でもないですが、とりあえず今日のところは続きます。
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コメント
こんにちわ~
遊びに来てくださってありがとう(^v^)
読ませていただきました♪
とても愛情こもったブログですね
続きが気になります(笑)
投稿: エポナ | 2007年3月20日 (火) 12時17分
エポナさん
わー、エポナさん、ようこそいらっしゃいました!
はい、このブログ、愛情こめまくりなんですが、最近愛情こめすぎてすごく堅苦しいブログになってきちゃいました…。(苦笑)
続き気にしてくださってありがとうございます。(笑)
また僕も遊びにいきますね。
投稿: たかゆき | 2007年3月20日 (火) 20時32分
☆こんばんわ☆
「さぁて、今日も一気に読むぞ~っ!!」って
気合入れて読み始めたのに、今回は短めでしたね(笑
いつもの長編に慣らされてしまったせいかな??
しかし高級ラウンジからのスカウトなんて、やりますね~
きっとたくさんのハプニングが待っていたのでしょうね?!
続き期待してまーす♪
投稿: やいちゃん | 2007年3月21日 (水) 20時46分
ありゃーーーΣ(ΘдΘ)
スカウトですか!!!
そ、そんなたかゆきさんの歌声?が良いのであれば、やはり死ぬまでには一回は聞かねば!!!!(。・ˇ∀ˇ・)ノ
そこからどうなったのか興味津々です(✿ฺ´∀`✿ฺ)ノ
でも、ストリートでSINGするほうがお金がいいとわ・・・
どんなけたかゆきさんってすごいのだろう(・∀・)ズドォーン
ジャズ・・・
どちらにしろ一回は聴きにいってみたいですなーー><
投稿: ショコラ | 2007年3月21日 (水) 23時37分
こんにちは〜^^
なんだか……いつもより『つづく』が申し訳なさそうに、ポツネン…としているように見えて、哀愁を感じ…
同時に何故か、笑いがこみ上げました(なぜ?)。
26歳のたかゆきさんというと〜…
丁度、今の私の年齢ですね〜。
人生色々…ですね。
たかゆきさんのブログ読むといつも思います!
特に、たかゆきさんが独特の歩み方をしてるのもあるけど…
いつも楽しく読ませて頂いております♪
投稿: チュン | 2007年3月22日 (木) 13時28分
スカウトとは本当にすごいですね☆☆
どんな歌声なのかますます気になるわ(笑)
そして、つづきも気になります。
高級ラウンジよりも路上で歌うほうがお金がいいなんてちょっとびっくりでした。
そういうお店に通うオジサンたちってたしかにフォークソング好きそうですよね。
でも、中島みゆきなんかも好きなんですよね(笑)
投稿: ayu | 2007年3月24日 (土) 01時02分
やいちゃん
これが短めに感じるということは、やいちゃん、かなりたかゆきの長編マジックに洗脳されておりますなあ。(笑)
ただ、いつもそうなんだけど、今回だって書く前はほんとは1回で書き切る予定だったんだけど、いざ書き出してみるとどんどん長くなって、とってもじゃないけど一回なんかじゃ書き切れないという事に気付くんです…。(苦笑)
ほんと、いっつもそう。(笑)
今回、ハプニングはそんなに無いかもしれないけど、とにかく頑張って続き書きますね。
やいちゃん、いっぱいコメントありがとう!
すごく嬉しかったです。
投稿: たかゆき | 2007年3月25日 (日) 09時00分
ショコラさん
そう、スカウトだったんです。
けどね、きっとそんな歌声がいいとかじゃなくて、ただ単に他に歌い手が見つからなかっただけだと思いますよ。(笑)
すごく急いではったし。
ただ、ストリートの方が儲かるっていうのは、ホントの話です。(←やっぱりやらしい!笑)
これは、歌がすごいとかじゃなくて、頭を使って他のいろんな要素で儲けてる感じです…。(苦笑)
後、ショコラさん、大きな勘違いをされておるであります!
僕は、ジャズなどは歌っておりません。
たぶん、ショコラさんは、高級ラウンジっていうのから想像してくれたんですね。
けど、あんなに難しいのはどれだけ背伸びしても歌えません!(笑)
いつも歌ってるのは、昔のフォークソングと呼ばれるものばっかりです。
「かぐや姫」だとか「チューリップ」だとか「吉田拓郎」だとか…。
ね、ジャズとは程遠いでしょ。(笑)
ショコラさん、ほんと、僕の歌なんてわざわざ聴きに来るようなシロモノじゃないですよ…。(苦笑)
けど、その気持ちはありがとうございます。
投稿: たかゆき | 2007年3月25日 (日) 09時21分
チュンさん
あれま!やっぱり気付いちゃいました?
この哀愁…。(笑)
実は、この文章書いてる時、僕自身正直あんまり元気がなくて、それが文章に表れてしまってるようで、後になってちょっと心配になってたんですよ。
さすがチュンさん、バレちゃってましたね。(笑)
けど、それで笑ってもらえたなら、ちょっとホッとします。
そっか、この時の僕の年齢が、今のチュンさんのお年なんですね。
頭の中は、格段にチュンさんの方が大人ですが…。(苦笑)
けど振り返ると、ほんとに今までの僕の人生、濃い~30年でした。
あんまり濃すぎたんで、正直最近ちょっと疲れちゃってます。(笑)
いつもありがとうございます、チュンさん。
こちらこそ、いつも楽しみに読ませてもらってるんですよ。
投稿: たかゆき | 2007年3月25日 (日) 09時54分
ayuさん
いやいやいや、スカウトっていったって、そんなに大したもんじゃないんです。
恥ずかしー。(照)
あちらは、大急ぎで歌い手を探してるって感じでしたから…。
いや、ほんと。
アセ、アセ…。(笑)
確かに路上である程度儲かってるっていうのもありますけど、逆にああいうお店のギャラが思っていたより安いっていうのにも僕はビックリしました。
(もちろん、中には高いギャラの方もいるんでしょうが…。)
後、お店に通うおじさんだけじゃなくて、僕がいつも歌っている飲み屋街全体にやってくる8割方の方が年代的にフォークソングが好きな気がします。(笑)
そして僕の中では、中島みゆきさんの歌もフォークソングっていう認識ですよ。(笑)
投稿: たかゆき | 2007年3月25日 (日) 10時17分