トサカ女
スカウト男の続き…
さてお仕事初日、この仕事はちゃんと正装して歌わなければいけないということで、当時まともな正装なんて一着も持っていなかった僕は、背格好の似ている友達に借りたスーツを着て営業1時間前にその新しいラウンジに向かった。
しかしまあ、パーティーとかはあるけど、こんなふうにお店に正式に雇われて歌うなんて経験が今までにないから、ものすごい緊張するなあ。
それに、恥ずかしながらスーツなんてものもほとんど着たことがなかったので、歩いてるだけでもロボットみたいな歩き方になってしまう…。
もう、体中カッチンコッチン。(笑)
そんな初めての緊張感の中、店にたどり着いたロボットたかゆきに、オーナーが一言。
「お!先生、おはようございます。
スーツ姿も決まってるじゃないですかー。
今日からよろしく頼みますよー。」
「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします。」
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
ん?
あれ?
ちょっと待てよ…。
今この人、俺の事「先生」って呼ばんかった?
せ、せんせい…?
パッと周りを見渡すが、この時間まだお店には僕とこのオーナーだけで、他に教師や医者や弁護士などの「先生」と呼ばれるような人種は存在しない…。
「も、もしかして、今言われた『先生』って、ぼ、僕のことですか?」
「当たり前じゃないですか。他に誰がいるんですか。」
「いやいやいや…。(苦笑)
僕みたいなもん、ただのストリートミュージシャンですし、そんな先生なんて呼ばれるような大それたものじゃないですよ。」
「ハッハッハ!
そっか、先生は知らないんですね。
いやね、夜の世界ではね、こういうお店で演奏する人の事をみんな『歌の先生』って呼ぶもんなんですよ。」
「は、はあ、そういうもんなんですか…。
けど僕、まだ26のペーペーなんで、河野さん(オーナーの名前)みたいな人に『先生』なんて呼ばれると、すごく恐縮しちゃいます…。」
「そんな、年齢なんて関係ないんです。
先生は先生なんやから。
まあ、夜の世界のただの形式だから、そんな固く考えずに。」
「は、はい。分かりました…。」
夜7時すぎ。
まず初めにたかゆき先生(笑)はお店の音響のチェックを兼ねたリハーサルを始めた。
しかしこのお店、別に歌を聴かせるのがメインのお店じゃなくて、おっちゃん達がキレイな女の子目当てにお酒を飲みに来るところだから、僕の歌は所詮BGM程度の生演奏であるらしく、ちゃんとしたステージがあるわけでもなく、最新の音響設備が整っているわけでもない。
人ひとりがようやく座れるぐらいのちょっとしたスペースで僕は歌い、もちろん専属の音響さんなんているはずもないので、音は、横にポツンと置いてある小っちゃくて質素なミキサー(音を調節する機械)を使って歌いながら自分自身で調整しろということだった。
さらに、そのミキサーの横には有線放送のチューナーが置いてある。
これは何に使うのかというと、僕が歌う時間は(お店のオープンする)夜8時から10時半までで、間に30分間の休憩が2回あって、実質歌うのは1時間半なんだけど、その休憩の時間はこの有線を流すらしいのだ。
そして、この有線の操作も僕がやれという指示。
つまり僕が店にいる間はずっと、この店の「音」全般は僕ひとりが取り仕切らなければならないらしい。
いやあ、初日からえらい責任重大な仕事や。
しかし、ただのストリートミュージシャンにそこまで全部やらすか…。
まあ、無駄な人件費を使わないというエコなやり方ではあるわな。
うん、地球に優しく、先生に厳しいお店だね。(笑)
そしてこの後、ひと通り説明を受けて、僕がギターの音やマイクの音を調整していると、7時半になって続々と着飾った女性達がお店に入ってきた。
どうやら、ホステスさんの出勤時間のようである。
彼女達の年齢は結構マチマチで、すごく若そうな人もいれば、僕と同じくらいかもっとそれ以上っぽい人もいた。
けど、さすが高級ラウンジだけあって、大抵の人(笑)がお綺麗である。
ただみんな、今日が新規オープンの初日だとは思えないほど緊張感が無く、
「おっはようございまーす☆」
「おっはー!」
などと、何とも軽い挨拶が店の中を飛び交っている。
聞くところによると、彼女達はみんなオーナーが経営しているもうひとつの店で働いていた女の子達で、新人の子は一人もおらず、新しい店とはいえオーナーを含め全員が今までの仲間であるらしい。
なるほどね。
だからか、それに対してオーナも、
「はい、○○ちゃん、おっはー!今日からまたよろしくねー☆」
などと、50歳すぎのお偉いさんとは思えないような幼稚な返答をしている…。(笑)
そして彼は、出勤してくるホステスさん一人一人に対して、僕の紹介も始めた。
「えっと、彼が今日からウチの店で演奏してくださる『歌の先生』。
ちゃんと挨拶しいや。」
ホステスA
「は~い。先生、おはようございま~す。」
ホステスB
「先生、わたし○○。よろしくね♡」
ホステスC
「お歌、楽しみにしてますね、先生♡」
・・・・・・・・ほう。
なかなか捨てたもんじゃないやんけ、
先生っちゅう仕事も…。(笑)
(しかし、こんな若い子が昔のフォークソングを楽しめるわけもないが…。苦笑)
7時40分すぎ。
一応ホステスさんは全員集まったようで、みんな店内の長椅子に一列に腰をかけておしゃべりしたりお化粧直ししたりと、相変わらずの和やかムードが続いていた。
そんな中、少し遅れてやって来たある一人の女性の登場で、店の空気が一変し、一気に緊張感に包まれることになる…。
ビシッと着物を着こなし、前髪はニワトリのトサカみたいに固められ、その存在を誇示するかのごとくシャナリシャナリと歩く推定年齢40歳ぐらいの美人な女性。
そう、この店のママさんのご出勤である。
しかし何だろう、この存在感というか、威圧感は…。
さっきまで騒がしかったみんなも、急に黙りかえってしまっている。
僕がそんな店の突然の空気の変わり様に驚いていると、オーナーが一言。
「あ、ママ、おはようございます!」
ママ
「はい、おはよう。」
「えっとね、彼が前に言ってた歌の先生。
今日から歌ってもらえることになりましたから。」
突然のオーナーからのフリに、
「あ、今日からここで歌わせてもらう、たかゆきと申します。
どうぞ、よろしくお願いします。」
と、僕が緊張しながらも慌てて立ち上がって挨拶すると、ママはビックリするぐらい明らかに興味の無さそうな態度で、何と僕の顔をチラリとも見ずに、
「あ、そう…。」
とだけつぶやいて、目の前を悠然と通り過ぎていった…。
え?
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
えええええええええええええええ!?
た、たったそれだけ…?(汗)
あ、そうって…。
あ、そうって…。
あ、そうって…。
わ~~ん。
怖いよ~。(涙)
しかし、なんじゃこのママは!?(苦笑)
言っとくけどなー、俺やって自分から好き好んでこの店で歌うわけじゃないんやからなー。
頼み込まれてしぶしぶOKしただけやねんからな。
ぶー、ぶー!
う~ん…。
くっそー!
覚えてやがれ、このトサカ女!!(笑)
つづく…。
(よーし、今度こそ急いで書くぞー!)
ブログランキング ←たかゆき先生にどうか応援を…。(笑)
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。



コメント
たかゆきさんwww
トサカ女、何かするんですよね!?
そうなんですよね!?笑
そうに違いない!!
てかママさんがトサカ・・・
トサカって、、普通のヤンキーとかがするような髪型しか思い浮かばないんですけど・・・汗
そうなんですか!?
そうなんですか?!(((((((((((゜д゜;)))))))))))ガクガクブルブル
ママの威圧感・・・みんなビビリまくりなのですかwww
投稿: ショコラ | 2007年3月26日 (月) 10時43分
続きを書いたら、またmixiに足あと残して下さいませ~。
投稿: Nem | 2007年3月26日 (月) 17時35分
たかゆき先生、ヤーマン!!!(←不自然?)
………ほう……悪くないやんけ。
……と、味をしめかけた、たかゆき先生。
しかし、世の中、甘くなかった!!
先生といえどもトサカ女(←ナイスなネーミングです☆)の前では、哀しきかな、たかゆき当時弱冠26歳のただの若造……
夜の世界に君臨する者の目には、取るに足らなかったのか!!??
……夜の世界ってこわいですね。
そんなお店のお勤め、絶対出来ないよぅ。
たかゆき先生、立ち上がれ!
トサカ女に負けるな!!!
その実力を見せつけてやれ!!!
今回の「つづく」には…ちょっと意気込み(?)が見えた…かも???
続き、楽しみにしてます^^
投稿: チュン | 2007年3月26日 (月) 18時52分
有線の操作まで!
まさにオールマイティー!
そりゃ先生と呼ばれるわ(笑)
トサカって・・・・
私の妄想では
すっごいことになっちゃったけど(笑)
続きを楽しみにしてますね★
先生っ♪
負けるな!
先生!!
投稿: 小町 | 2007年3月27日 (火) 01時03分
おっはー!!
わー。ひっさしぶりに聞いたなー。
トサカ女・・。大人やなー。かっこいいなー。
「あ、っそう」
わーーーww
私も今度使ってみてよ。
投稿: よしこ | 2007年3月28日 (水) 20時04分
ショコラさん
トサカ女、ほんとすごい貫禄で、すごい威圧感でしたよ。
ただ、周りのホステスさん達までがほんとにビビリまくってたのかどうかは正直分かりませんが、「私がこの店を仕切ってるのよ」オーラは明らかに店全体に出まくってました…。(笑)
そして、トサカ…。(笑)
そっか、やっぱりトサカってヤンキーの髪型のイメージですか。
実際はそこまで激しいものではないんですが、とにかく前髪がモコってなって、こんもりしてる感じだったんです。
だから、勝手に命名してしまいました…。(笑)
投稿: たかゆき | 2007年3月31日 (土) 21時14分
nemさん
はじめまして、nemさん!!
続きを全部書き終えたので、またmixiにでもメッセージ入れさせてもらいますね。
投稿: たかゆき | 2007年3月31日 (土) 22時17分
チュンさん
チュンさん、ヤーマン!!!!(笑)
チュンさん、このコメント何だか壮大な予告編(?)みたいですごい楽しくて嬉しいです!!
(トサカ女ってネーミング、気に入ってもらえました?笑)
ほんと、夜の世界の裏側はこわいですよー。
チュンさん、これからもくれぐれも足を踏み入れることのないように…。(笑)
僕もこの後、トサカ女に負けないように頑張るつもりだったんですが、続きはごらんの有り様…。(苦笑)
やっぱり、こういう仕事は僕には向いてません!(笑)
投稿: たかゆき | 2007年3月31日 (土) 22時32分
小町さん
こまちん、そうやろ。
ほんま、どこまでさせるねん、って感じやろ。(笑)
あっちからしてみれば、俺なんか、前の日まで道ばたで歌ってた、ただの兄ちゃんやのに…。(苦笑)
トサカ…。
もうせっかくやから、こまちんのそのままのすごい妄想のまま置いといて。(笑)
応援ありがとう。
けど、続き読んでもらったら分かると思うけど、俺この後、散々よ…。(笑)
投稿: たかゆき | 2007年3月31日 (土) 22時40分
よしこさん
おっはー!
もそうですけど、彼女達、
おっつー!
も、使ってましたよ。(笑)
わー、よしこさん!
トサカ女に憧れちゃ、ダメー!!
よしこさんに、「あ、っそう。」なんて言われた日にゃあ、僕しばらく山にこもっちゃいそうです…。(笑)
というわけでよしこさん、今日も1日おっつー!
投稿: たかゆき | 2007年3月31日 (土) 23時03分
たかゆきさん、こんばんわ☆
そんな夜の世界に飛び込んで、
ほんとにたかゆきさん大丈夫ですか??
火遊びに目覚めてやけどでもしなければいいですけど(笑
投稿: やいちゃん | 2007年4月 3日 (火) 18時55分
やいちゃん
いやあーやいちゃん、実際に夜の世界の「裏側」を目にしたら、そんな火遊びしようなんて気持ちは一気に失せてしまいますよ。(笑)
まあ今回、火遊びをしたわけじゃないのに、「やけど」は十分に負いましたけどね…。(笑)
投稿: たかゆき | 2007年4月 9日 (月) 02時05分