この仕事において、最大の天敵はやはり警察です。
警察に止められてしまうと、仕事としてまったく成り立たなくなってしまうからです。
だから僕は、今まで日本一周の旅の時を含めて、全国各地でさまざまなバトルを繰り広げてきました。
みなさんの中でも、街のストリートミュージシャンがお巡りさんに演奏を止められている姿を見かけたことのある人がおられるんじゃないかと思います。
まあ周りからの騒音の苦情や通報があった場合は、道で勝手に歌っているこちらに非があるので、止められるのもまったく仕方ないんですが、苦情や通報がなくても、特に何の説明もなく当たり前のように強制的に止められる事もよくあります。
しかし、ストリートミュージシャンを見つけても、何事もないかのように通り過ぎるお巡りさんもそれ以上に存在して、止められる基準がよく分からないことが多いのです。
これは、ストリートミュージシャンに対しての明確な全国統一の取締りの法律っていうものが存在しなくて、その地域や、ましてやお巡りさん個人個人によっても解釈が全く異なることからくるようです。
確かに、路上演奏自体が直接犯罪につながるようなものではないという事はみんな分かっていても、やはり街の秩序を守るのが役目のお巡りさんにとっては、道で許可無く演奏をするなんてことが、悪い事ではないにしても見逃すわけにもいかないということがあるんでしょう。
あちら側の立場にたてば、分からない気もしないではありません。
けど逆に、悪い事をしているわけではないので、問題がおきない限りは止めることもないだろうという解釈のお巡りさんもたくさんいるわけです。
ほんと、個人個人、地域地域によってまちまちなんです。
ただ中には、同じ一人のお巡りさんでも前日には何の注意もなく、次の日には突然止めてくるなんてこともあり、明らかに気まぐれで止めているとしか思えない時もあります。
趣味や練習のために外で演奏している場合は、止められても、まあ今日のところは仕方ないかなどと思えるかもしれませんが、僕の場合は生活のためにどうしてもお金を稼がないといけないという事情があるので、そんなお巡りさんのきまぐれなんかによって止められてしまうとほんとたまったもんじゃありません。
これらのことから、この10年間僕は(特に旅中)、演奏中にお巡りさんが目の前を通り過ぎると、このお巡りさんは突然止めやしないかと毎回極度の緊張をして、必要以上にドギマギしてしまうということを今現在に至るまでずっと続けています。
だから僕の頭の中では、この仕事においては「警察=天敵」という構図が出来上がってしまっていて、正直お巡りさんがすごく苦手なんです。
苦手すぎて仕事以外のプライベートな時でも、悪い事は何もしていないのに、お巡りさんを見かけるとよくベンツ君で猛スピードで逃げてしまうくらいです。(笑)
しかし、今までこれだけ長い間この仕事を続けていると、ごくごくごくごく稀にすごく優しいお巡りさんに出会う時もありました。
前置きが長くなりましたが、今日は僕の中で思い出に残っているそんな優しかったある2組のお巡りさんの事についてお話したいと思います。
まずは1組目。
これは4年前の日本一周1人旅の時の東京での話です。
この日の出来事が旅日記に詳しく書いてあったので、それを参照して書いていきたいと思います。
その夜僕は、「上野」だか「御徒町(おかちまち)」だかの飲み屋街で弾き語りをすることにした。
もちろんここで弾き語りをするのは初めてなのだが、初めての場所での弾き語りっていうのはいつも本当にめちゃくちゃ緊張する。
お客さんからリクエストを受け付けて、アンプやマイクを使って歌うという、そういったスタイルのストリートミュージシャンっていうのはあまりいなくて物珍しいので、通る人通る人がみんなすごい不審な目で僕を見てくるのだ。
それにやはり、初めての場所であると同時に夜の歓楽街ということもあり、さまざまなトラブルが想定されるわけだ。
けどそんな中でも、お金を儲けないと、旅はおろか生活すら出来なくなってしまうので、僕はものすごい緊張をしながらも、いつも以上に必死に営業をする。
想像してみてほしい。
生まれて初めて訪れた土地の夜の歓楽街の道端で、まったくの1人で突然アンプやマイクの準備をして演奏を始め、酔っ払った大人達からの好奇の目や周辺のお店からの煙たい目に耐えながら、さらにその上お金をまでもをたくさん儲けなければいけないのだ。
どれだけの緊張とプレッシャーか。
けどいつも以上に必死に営業するせいか、おかげさまで、今まで全国各地いろんな所で弾き語りをやってきたが、ほとんどの場所で大阪と同じかもしくはそれ以上の儲けをださせてもらっている。
(ちなみに旅中っていうのは、いつ旅が終わるか分からないので、大阪のマンションの家賃や健康保険などのお金をちゃんと払いつつさらに旅の資金も稼いでいたのである。すごいでしょ。)
とにかく、そういったわけで初めての場所はすごく緊張するのだが、実はその他にもまだやっかいな存在がいる。
それは各地の飲み屋街に大抵いる、うさんくさい「客引き」のおっさん達である。
(地域によっては、客引き行為は条例違反の所もたくさんある。)
このおっさん達は僕みたいにお金を儲ける為の弾き語りをしていると、なんだか自分達のテリトリーが侵されたような気分になって、文句を言ってきたり変な嫌がらせをしてきたりすることがあるのだ。
今回ここ上野でも例にもれず、周りの客引き達はみんないい顔をしておらず、1人の客引きが「ここでやるな。他のところでやれ。」というようなことを言ってきた。
ただこんなことはよくあることで、僕も商売なのでうさんくさい客引きなんかにいちいち気を使ってられないので、そんな言葉は無視して仕事を続けていた。
そうすると、客引きの反応とは反比例して道行く人達の反応は上々で、なかなか順調な弾き語りだったのだが、途中お巡りさんが2人僕の前に現れてしまった…。
あ~あ、周りの店から苦情でも入ったんかなあ。
絶対、止められるわ。しゅん…。(涙)
お巡り
「あのー、ちょっとごめんね。
今、ここでトラブルか何か起きた?」
ん?トラブル?
「いや、何にも起こってませんけど。
なんかありまありましたん?」
「いやー、あれー、おかしいなあ。
まあ、何にも起こってないならいいんだけどね。」
「通報かなんかがあったんですか?」
「そう、さっき110番があってね。
ここで何かトラブルが起きてるって言うから、来てみたんだけどね。
ホントに何もなかったの?」
「はい、何にもトラブルなんて起こってませんねえ。」
「ほんとお。
じゃあ、まあ、いいや。
とりあえず、免許証か何かだけ見せてもらえるかなあ。」
え?じゃあ、まあ、いいや?
なんかよう訳の分からん話やけど、とりあえずここは素直に免許証渡しとこうっと。
けど、通報ってなんやろう?
誰の通報や?
そして、トラブルってなんや?
あっ!
ハッハ~ン、分かったぞ。
さっきの周りの客引き達が、俺を止めさすために匿名で警察に電話して、ここでトラブルが起きてるってウソの通報して、お巡りさんを呼びよったんやわ。
それしか考えられへん。
うわー、25歳(当時)の若者1人に対して、何て姑息な手をつかうおっさんんどもや。
人間小っちゃすぎる。
まあけど、今はとりあえず目の前のお巡りさん2人との対決が先である。
どうせ、通報があったからには、とにかくここではやったらあかんって言われるに決まってるんだから…。
お巡りさんが免許証の住所を控えている途中、さっきまで歌を聴いてくれて僕と喋っていた1人の酔っ払ったサラリーマンがそのお巡りさんに詰め寄った。
よくある風景だ。
「おいっ!
大阪からわざわざやって来た若者がこんなに頑張ってるのに、お前達は止めさせる気かっ!」
僕も一応、苦笑いで止めに入る。
「おとうさん、ありがとう。
けど、大丈夫やから。
俺一人で何とかするから。
ほんま、気使ってくれてありがとう。」
しかし、それを聞いた2人のうちの年配の方のお巡りさんがビックリ発言。
「何言ってるの。
こんなに素晴らしい若者を、僕たちが止めるわけないじゃないの。
ただ、決まりで住所を控えてるだけ。
ほんとに、こんなに歌のうまい子に苦情を出す人の気が知れないねえ。」
ホワット?
な、なにを言ってるのかな、このお巡りさん、いやお巡り様は…。
自分の立場、分かっていらっしゃる?
お巡り様
「君も大阪から来たんでしょ。
大変だねえ。
まだ寒いから、風邪なんかひいちゃだめだよ。
ハイ、これ免許証。」
「あ、ありがとうございます。」
うわー、なんてカッコいいお巡り様や。
人間大っきすぎる。
ぼく、おおきくなったらおまわりさんみたいなおまわりさんになる!
とまあ、無事このようなことで、弾き語りを再開することができたんだけど、仕切りなおしに一曲「なごり雪」を歌い始めた時、帰ろうとしていたお巡りさんが発した言葉に、僕はもう涙を流さずにはいられなかった…。
(年配の方のお巡りさんが、若いお巡りさんに向かって)
「なあ、
せっかくだから
俺たちも
一曲
聴いていくか。」
・・・・・・・・・・・・・・・。
え?
嘘でしょ?
キャーーーーーー!
抱いて…。
こわれるくらい…。
もっと強く…。
想像してみてほしい。
街の弾き語りを、立ち止まって聴いている制服警官2人。
一曲終わると、笑顔で拍手している制服警官2人。
ありえる?
今までいくどとなく繰り返されてきたお巡りさんとの戦いの中で、こんなことがいまだかつてあっただろうか?
いや、ない。
いや、今あった。
バンザーイ。
さらに、若い方のお巡りさんまでもが、帰り際にギターケースのお金を指さして、
「これ、せっかく頑張って稼いだお金なんだから、とられないように気をつけなきゃいけないよ。」
と、言ってくださった。
ああ、ただただ感激。
とにかく、東京にはそんな素敵すぎるお巡りさんがいました。
東京大好き!
ちなみに、それからも東京のいろんな場所で弾き語りをしましたが、この後出会うお巡りさん達はみんなそろってろくでもない理不尽なお巡りさんばっかりでした。(苦笑)
東京大嫌い!(笑)
さあ、2組目のお巡りさんの話も書こうと思っていましたが、ここまででいつものように(笑)また長くなってしまったので、今日はこの辺でやめておきます。
2組目の話はまた別の機会に書きますね。
前回みなさんが言ってくださったように、自分のペース、自分のペース。
ほんとに温かいお言葉たくさんありがとうございました。
みんな大好き!
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